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「スラバのスノーショー」日本公演開幕!

シルク・ドゥ・ソレイユの名作「アレグリア」の一場面を制作した、世界最高峰の道化師スラバ・ポルニン。
1993年に企画したのが「スラバのスノーショー」。本人が創作・演出する体感型のファンタジーショーで、1993年の初演以降25年間でローレンス・オリヴィエ賞など世界9カ国で20以上の国際演劇賞を受賞し、世界35カ国以上で現在までに700万人以上を動員している大ヒット作です。

2019年4月の取材会、7月上旬のスペシャルサポーター追加発表を経て、いよいよ2019年7月19日(金)3度目の来日公演の幕が開きました。大阪府大阪市のCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて報道公開日となった2019年7月20日(土)の公演の様子をお伝えします。

【公演の様子】

場内に入ると、薄暗い照明に汽車の汽笛やドラフト音、そして足元に残っている紙吹雪がこれから始まる物語の想像をかき立てます。

おどろおどろしい曲と照明の中から登場したのは黄色い衣裳を着たクラウン。

有機的なBGMが流れる中、緑の衣裳を着たクラウン達も登場し、見事なノンバーバル(セリフなし)のファンタジーショーが繰り広げられます。
クラウンにスポットライトが当てられないシーンもあり、その能動的な場面の作りは見る者に様々な刺激を与えてくれそう。

船の航海の陽気で晴れやかなシーンがあったかと思えば、

漆黒の中に冥界を思わせる不気味な姿の演者が行くシーンがあったりと本作品の鑑賞推奨年齢が8歳以上となっているのも頷けるダークな場面が。

そして黄色のクラウンが舞台袖のセットの端を摘むと瞬く間に蜘蛛の糸に絡まれたかと思うと次はTTホールの700席を超える会場内全域を覆う巨大な蜘蛛の巣が舞台前方から客席後方へ向けて縦断します。

一幕が終了し、休憩時間の合間にもクラウン達が来場者を楽しませます。

ただし、そのやり方がこちらの思いも付かない方法で自由気ままなクラウン達が客席内を縦横無尽に回りながら行います。場合によってはいきなり「濡れる」恐れも。

そして黄色のクラウンと緑のクラウンが見事に一心同体のパントマイムを魅せる「影」のシーン。

スノーショーの初演である1993年のロシア公演からあるというコートを使用したシーン。

数々のシーンを経て、スラバ・ポルニンが幼少期に見た深深と雪が降り積もる、彼が生まれ育った地の光景を髣髴とさせる静かなシーンの直後に訪れるのは、観客の誰もが思わず恐怖を感じるレベルの猛吹雪。
完全に視界を奪い去るホワイトアウトと呼べそうな程の量の猛烈極まりない、怒涛の紙吹雪が会場内に吹き荒れます。

舞台上では一人、黄色のクラウンがこの猛吹雪の中に立っていますが、まず視認はできません。
吹雪が収まると座席や通路には、こんもりと雪だるまが作れそうな程、紙吹雪が「積もっている」光景に来場者は唖然とする事でしょう。

場内が騒然とする中、クラウン達が登場しカーテンコールへ。

ただ、ここで終わらないのが「スラバのスノーショー」。
舞台上から様々な大きさの無数の風船が客席へ投入され、最後まで来場者を楽しませます。

子供達と陽気に遊ぶクラウンの姿も。

約1時間30分のステージは驚きと感銘の連続を経て終了しました。

【出演者へのインタビュー】

公演終了後、公演の出演キャストのクラウンの中から黄色のクラウンを演じたアルチョム・ジモーさんと背の高い緑のクラウンの一人を演じたスラバ・ポルニンさんの息子のヴァーニャ・ポルニンさんがインタビューに応じて下さいました。

日本公演が始まりましたが、最初の公演の地、関西の観客の反応いかがでしょうか。

アルチョムさん「前回の来日公演が2016年だったので、それから3年が経った事になります。
昨日(19日)が初日だったので、初日はまだ手探りの状態だったと思うんですが、今日はお客様との”直接的な対話”があったなと手応えを感じています。お客様の方も凄く積極的に参加してくれたと思いますし、これから芝居を重ねて行くにつれて、お客様との相互協力関係の様な物がもっと高まっていくのかなという風に感じています。毎回、新しい公演地やその公演地での初日の前というのは、その街のお客様との「コンタクトの鍵」をずっと探している様な感じなんですよね。それが上演を何回か重ねる事によって、段々とそのコンタクトが増えていき、お客様がもっともっと参加して貰えるようなお互いの関係性を作れる様になっていくのです。お客様(の顔ぶれ)というのは毎日変わっていくのだけれども、私達も毎日変わっていく街のお客様達に「教育されている」というような感じですね。」

自身が感じる「スラバのスノーショー」の一番の魅力をお願いします。

ヴァーニャさん「先ず、このお芝居には人間の基本的な感情(恐れ・幸せ・悲劇的な物)が全て入っていると思うんですが、私達は言葉では無くパントマイムで芝居をしているので、パントマイムの時に伝えられるのは、やっぱり「感情」なんですね。感情を見せる事によってより、観客の一人一人に近づく事が出来ると考えています。喋って語るよりも、もっと近くなれるんじゃないかと。この作品には子供の感覚と大人の感覚の両方が入っているので、”大人達も子供の感覚”になれるのではないかと思います。この作品に蜘蛛の巣やボール、風船等の特殊効果がありますが、そんな特殊効果よりもエモーショナルな部分が特に大事だなと思っています。スラバ・ポルニンは雰囲気を作り出すのが凄く上手いんですね。お客様は劇場内に入った瞬間からその雰囲気に入って行くキッカケの音楽が場内に流れていて、足元には雪があって、という風になっているので、物語が始まる前からお客様が芝居に入っていく準備が出来ている訳です。だから私達もお客様との芝居は凄くやり易いです。」

アルチョムさん「私はこの質問にはどうしても劇団内の人間としての答えになってしまうんですけども、俳優としては今、ヴァーニャが言ったように、複数の感覚が混ざり合わさった物というのを舞台の上で感じる事が出来るというのは非常に重要な事です。例えば、可笑しな感じや悲しそうな感じ、そういった複数の主人公の感覚のタイプというのを一つの作品の短い時間の中で味わう事が出来る。しかもその感覚というのを真摯に味わう事が出来る。見掛けだけでは無く、心から悲しいとか、心から辛い・面白いという、非常にオープンで真摯な感覚というのを舞台の上で持つことが出来る、しかもそれが非常に複数の感覚が交合わさり、コンビネーションになっているというのが、自分や全ての俳優にとってこういう経験というのは非常に大事だと思っています。」

ヴァーニャさん「この作品というのは兎に角、何時も違う・毎回違うんですよ。それは、観客の皆様によって違うとさっき話しましたけれども、俳優のコンディションによっても凄く違うと思うんですよね。例えば、今日は自分が劇場に凄く幸せな気分で来た時は自分の演じる登場人物も幸せな人として演じるんです。でも、朝から「憂鬱だな…」と思って来た時には、その憂鬱を隠さずに憂鬱なまま、演じるんです。そうやって自分自身が自分の気持ちに正直な状態で登場人物を演じるという事によって、毎回、全く違う芝居になる。しかも私達は役を交換するんですね。そうやって役を代える事によって、また全然違う雰囲気になります。」

アルチョムさん「もう25年位、この芝居をやっているんですけども、全く退屈をしません。しかも自分が出ていない場面で外から見ている時も凄く面白くて、うっかりすると自分が舞台に登場するのを忘れてしまう事もあるという事でした。この作品を私達は皆、凄く愛し大切にしています。だからこそ夫々の与えられた「決まり事」を演じるというのは絶対にしません。何故かというと一時間半の公演の中での決まり事、「どこで曲がる、何をやる、」等というのはそんなに沢山は無い訳なんですね。それを単に決まり事だけやってしまったら、この芝居は死んでしまうんです。だから、毎回一回一回の芝居を創造する事の喜びとか、芝居を生きさせる事の喜びを私達は大切にして演じています。」

自身が演じて来た中で、スノーショーで起こった印象的なエピソードはありますか。

ヴァーニャさん「いっぱい有ります!」

アルチョムさん「これは凄いエピソードなんですけども、4年前にシンガポールでの公演で会場に6歳・8歳・12歳の3人の子供を連れた家族が来て下さって、その家族の主人と奥さんは
今から16年位前だったと思うんですが、当時の彼と彼女で一緒に芝居を観に来てくれたカップルだったんですね。二人はどういうカップルだったかというと、芝居を観に来てくれて、この芝居が非常に素晴らしく心の篭った作品を観て、当時の彼が「実は一緒に来た彼女に僕は結婚の申込をしたいんだ。助けてくれないか?」という話をしたんです。そうしたら、是非助けようじゃないかと公演の休憩時間に彼に緑のクラウンの格好をさせて休憩時間に場内を走り回ったり、雪を被せたり等をさせて。そして休憩時間が終わる頃、彼女を追いかけ引き止めて、彼女に急に指輪を差し出し、彼等の周りの他のクラウン達が彼から帽子を外すと彼女が「まあ、なんて事でしょう!」となって二人は結婚したんですよ。その人達がつい最近、また来てくれたというのが凄く奇跡的な嬉しい事でしたね。」

ヴァーニャさん「僕は失敗の話になるんですけど、失敗ってお客様には大体、見えないものなんですよね。でも、それがお客様に見えた時というのが僕はとても好きなんです。何故かと言うと、それは舞台の上で何か新しいモノが生まれる瞬間だからなんですね。公演の中ではアルチョムの黄色のクラウンの影を僕の緑のクラウンが演じる「影のシーン」がありますが、そのシーンでアルチョムが凄く可笑しい冗談をやったので、思わず笑わずにはいられなくて、床に転がって笑う程の大笑いをしてアルチョムもそれを見て笑う、という様な感じになって一緒に観客も大笑いという状態に。正にこれは今までにお客様が見た事が無いシーンなんですよ。その初めてのシーンというのはお客さんの前で生まれてそれを一緒に目撃して貰ったというのがとても良かったと思いますし、こういう事は時々あって面白い事があると、その場面を最初からやり直したりするんですね。途中で笑ってまた最初に戻ったりとかという事もあって、お客様の前で失敗して新しい物が生まれるというのは私にとっても好きな所です。」

アルチョムさん「普通の道化芝居やこういうコメディのジャンルだと、自分達が演じている最中に自分で笑うというのは良くないとされているんですよね。でもそれがあってお客様に見せてはいけないという部分に対し、お互いに笑わせるという事が必要になっていると思うんですけども、この場合、自分達でも笑いを堪えられない程、エネルギーが高まっている事なので、私達はこれをとても良いと思っています。」

スラバ・ポルニン氏は自身にとってどんな存在でしょうか。

ヴァーニャさん「僕にとっては先ずは父親です。そしてインスピレーションの源でもあります。」

アルチョムさん「彼は本当に天才なんです。正に誰もが認める天才というのがポルニンさんです。「天才」という概念が日本語にはありますか?それは正に彼なんです。」

ヴァーニャさん「スラバ・ポルニンは教える事が得意ではないんですね。だけれども、自分がそこにいると勉強したくなるような環境を作ってくれる。それは何故かというと私達自身がこのお芝居をやっている時、自分達がお祭りの中にいる様な感じになるんですよ。自分達が凄く楽しいからそれを観客にも伝染させる。そして皆で楽しくなってお客様が更に参加してくれて、その楽しさがどんどんと大きくなっていく、というような物だと思っています。だからスラバ・ポルニンはどういう風に幸せになるかとか、「幸せの先生」として最高だと思います。」

先日のスペシャルサポーター追加発表において「平成ノブシコブシ」の徳井健太さんは
スラバ・ポルニンさんから「クラウンの極意は『酔っ払い』」と語られたと話したが、自身にとって、クラウンとはどんな存在でしょうか。

アルチョムさん「徳井さんのその言葉なんですけども、多分、クラウンの舞台上での言語は運動であり、その運動の持つ意味を私達は酔っ払いとか子供とかに学ばなければいけないと言ったから、今のコメントが出て来たんだと思うんですね。酔っ払いと子供というのはどのような存在かというと「最も開けっ広げな人達」という事です。酔っ払いはある種の自由さを持っていますし、子供も決まり事に囚われない新鮮な目で素朴に色んな事を見ていますよね。例えば、椅子を見て、「これはどうやって作られているんだろう」というのを先入観を無しに見て純粋に知りたがるという事をすると。自由で何者にも囚われず、何かに興味を持って自身の内側でその「囚われなさ」みたいな物に成り切るという事、それを考えるという事こそが大事な事であって、ロシアの作家、ミハエル・チェーホフの甥もそう言っているんですけども、正にそういう事を言いたかったんだと思います。」

最後にこれから公演を楽しみにしている日本のファンにメッセージをお願いします。

ヴァーニャさん「先ずは、来てね!」

アルチョムさん「初めて芝居を御覧になる方は、私自身はとても羨ましい。この芝居を初めて観る時のあの幸せな感覚というのを皆さんにも味わって欲しいです。もう一度、2回目・3回目と来て下さる方は私達はとても愛しています。何回も来てくれるという事は私達の事も愛してくれているんですよね。心の底から楽しんで頂ける様なお芝居を真心を込めて上演しますので、是非、来て下さい。」

ヴァーニャさん「是非、家族でお越しになって欲しいし、あるいは凄く悲しい気分の時に一人で来てくれても良いし、芝居の後、劇場に残って一緒にゲームをしたりという事も出来るし、風船などで遊ぶだけでは無く、その後の海外公演まで一緒に付いて行く事だって出来る。お客さんの中には本当に劇団の中に入ってしまう人も居るので、それも良いですよ。例えば、シャンパンを持って来て、公演後に一緒にシャンパンを飲むのも良い!最後の場面にはロマンティックなシーンもありますので、デートにも相応しいですし、どんなお客様が来ても楽しんで貰えるんじゃないかと思います。もしかしたら、シンガポールの時の様に素敵なカップルが生まれるかも知れませんしね。」
と、クラウンのお二人はスノーショーの魅力を存分に語ってくれました。

三度目の来日公演を果たす「スラバのスノーショー」。是非、劇場へ。

 

【「SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー」公演概要】

公式サイトはこちら

<公演期間>
大阪公演:2019年7月19日(金)~8月7日(水)
東京公演:2019年8月10日(土)~8月25日(日)

<会場>
大阪:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
東京:シアター1010

<公演時間>
約1時間30分(10分間の途中休憩を含む)

<料金>
大阪:S席8,500円
東京:S席8,500円(1階席)A席6,500円(2階席)
(全席指定・税込/当日・前売共)
※この作品は推奨年齢が8歳以上になります。
※おひとり様1枚ずつチケットが必要です。膝上での観覧不可。
※出演者が変更になる可能性がございます。

<出演者>※2019年7月20日13時公演
アルチョム・ジモー
ロベルト・サラルプ
ヴァーニャ・ポルニン
ゲオルギー・デリエフ
アレクサンドル・フリッシュ
ニコライ・テレンシエフ

ターニャ・カラムィシェヴァ

※日によって出演者と配役が異なります。

<STAFF>
創作・演出:スラバ・ポルニン
大阪公演主催:吉本興業
東京公演主催:吉本興業/キョードーファクトリー
東京公演共催:足立区シアター1010指定管理者
企画・招聘・制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

Photo by V.Mishukov

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