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第35回東京国際映画祭 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督・深田晃司監督を迎え、14年ぶりの「黒澤明賞」受賞式を開催

第35回東京国際映画祭(以下、TIFF)は日本が世界に誇る故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、
新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、
そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、
本年14年ぶりに「黒澤明賞」の復活を発表。
2022年10月29日(土)、東京都千代田区の帝国ホテルにて受賞者が登壇しての授賞式が行われました。

【「黒澤明賞」授賞式の様子】

2008年、ロシアのニキータ・ミハルコフ監督と中国のチェン・カイコー(陳凱歌)監督の受賞以来、
14年ぶりに復活したTIFFの黒澤明賞。過去にはスティーヴン・スピルバーグ、山田洋次、侯孝賢などが受賞していた同賞ですが、
今年は、山田洋次監督、仲代達矢氏、原田美枝子氏、川本三郎氏、市山尚三東京国際映画祭
プログラミング・ディレクターの5名の選考委員により、選考が行われた結果、
受賞者はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と深田晃司監督に決定。

授賞式会場となった帝国ホテル本館3階の「富士の間」の入口には、黒澤プロダクションより
この授賞式の為に貸し出された黒澤明映画作品ゆかりの品々が展示され、
中には映画「影武者」で実際に仲代達矢氏が着用した武田信玄の兜等、博物館級の貴重品も。

授賞式冒頭、安藤裕康第35回東京国際映画祭チェアマンからの挨拶が。
安藤チェアマン「先日、黒澤明監督の御親族の方とお話をしておりました際に
黒澤作品全体に通ずるテーマとは一体何だろうか?という話になりまして、
その方は「正義と人間愛」だろうと仰いました。私も全く同感です。
そして今日、日本と世界の中で起こっている様々な出来事も、これらに思いを致しますと、
正に正義と人間愛こそが最も必要な事だと痛感する訳です。
今回の黒澤明賞の復活は誠に時宜を得た物ではないかという風に考えます。」

そして第35回TIFF黒澤明賞受賞者であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と
深田晃司監督が登壇。プレゼンターである株式会社カプコン代表取締役会長の辻本憲三氏より、
トロフィーと賞金100万円が夫々に贈られました。
黒澤明賞を受賞した感想がイニャリトゥ監督、深田監督の双方から話されます。

イニャリトゥ監督「こんばんわ。また東京にいられる事を光栄に思っています。
本当に素晴らしい意義のあるこの賞をこうして深田監督と共に受けるのは大きな喜びです。
私が東京に始めて来たのは22年前、まだ若い映画作家でデビュー作品の『アモーレス・ぺロス』は
運に恵まれまして、最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞という事で、何と当時の10万ドル相当の賞金を得て、
私のデビュー作は低予算で作ったのにこんな大金をいただけた事、そしてその7年後に
私は『バベル』という作品の一部を撮影する為、また来日をして5か月間日本に住んでいました。
その後にまた、東京国際映画祭の審査委員長という事で当時のチェアマンの依田巽さんに
お声がけをいただいて東京に戻って来ました。そして4年前には娘のマリア・ラティアと共に
日本の北の方、あまり人の居ない所を修行僧の様に歩いて巡り、その後奈良に移動して
陶芸家の辻村史朗さんから学ぶ機会を得て、尊敬する先生から学ぶ機会でした。
そして今回、私は息子のエリセオと一緒に来日しています。
この街を息子と一緒に体験して、私と日本文化の関係を息子にも知ってもらう機会であると共に
先ず、日本の音楽、文学や映画といった物に私が非常に大きな影響を受けて来ました。
そして今回の黒澤明賞ですが、映画の巨匠の中の巨匠ですよね。映画の殿堂の中の神と呼べる方ですが、
世界中の映画作家が黒澤監督の作品を大事に思っていると同時に、黒澤監督作品は人間性、
そしてその複雑さという物を映画の中で描かれていて、私個人としては特に3つの作品に大きな影響を受けました。
1つ目は「羅生門」。「アモーレス・ぺロス」にその影響が現れているかと思います。
2つ目「乱」と「七人の侍」は「レヴェナント: 蘇えりし者」に活かされていると思います。
そして「生きる」は「BIUTIFUL ビューティフル」にその影響がみてとれるかと思います。
またこの東京を訪れる機会を与えていただいた事、そして今夜ここで皆さんと過ごせる事をとても嬉しく思います。」

深田監督「今日はイニャリトゥ監督みたいな凄い先輩の偉大な監督と同じ名前の賞を
いただけた事にとても嬉しく思います。黒澤明監督という本当に偉大な名前には、
まだまだ遠く及ばない存在である事は間違いない、及ぶ事も出来ない存在である事は間違い無いので
今後もより頑張れという叱咤の意味合いがあると思って頑張っていきたいと思っています。
映画を好きになり始めた頃に黒澤明監督の「野良犬」という作品を、地元の市民上映会で
16㎜フィルムで初めてその作品を見た時に本当に面白くて、僕が生まれるよりはるか昔に
作られた映画でもこんなに面白い映画があるんだというのを知って、映画ばかりを見る中高生になりました。
私は黒澤明監督、溝口健司監督等、当時の優れた映画監督が作った偉大な日本映画を見て育ち、
映画業界に入りました。ただ私が入った2000年代の日本映画業界というのは、当時とは大分違う物になっていました。
黒澤明監督が支えて来た日本映画の全盛期・黄金時代と呼ばれる時代は監督・スタッフ・俳優が皆、
スタジオとの専属契約という形で非常に安定した雇用の中で優れた映画を量産するという時代で、
その後テレビが普及すると共に撮影所のシステムが維持が出来なくなってきていて、システムが崩壊した訳ですね。
その後、スタッフ・監督・俳優も皆、フリーランスという形で働く様になったんですけど、
常に安定した物から非常に不安定な雇用環境に置かれた訳ですけど、残念ながら日本映画界は
その雇用の変化に対応しきれたかというと、対応をしてこれなかったという風に考えています。
映画業界にまだ余力があった頃にはまだ良かったかも知れませんが、2000年以降、
どんどん制作予算が低下していき、スタッフ・俳優は非常に不安定な収入や雇用形態、
長時間労働や劣悪な撮影環境が続いていた中で、更には2020年以降はコロナが来た事によって
私達の仕事は益々厳しいものとなっていきました。只でさえ俳優というのは
体を晒して仕事をしていて、評価にさらされ続ける、精神的に非常に大きなストレスを
抱えながら生きている彼等がコロナ禍で仕事を無くしていくという様な状況もある中で
芸術に携わる人達の心の健康をどうやって守っていくかというのは、非常に大きな課題となっています。
本来であれば行政がフリーランスの表現活動に関わる人の心の健康をどうするかというのを
取り組まなくてはいけないと思いますが、残念ながら公的なセーフティネットがあるという状況まで至っていません。
そういった中で今、日本芸能従事者協会という団体が「芸能従事者こころの119」という
メンタルケア窓口を開いています。この黒澤明賞の賞金を11月に期限切れで一旦終了になってしまう状況の
「芸能従事者心の119」の存続の為に寄付をしたいと思います。ちなみに一番好きな黒澤明映画は「どですかでん」です。」

【第35回東京国際映画祭 黒澤明賞 選考にあたって】

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、選考委員からは、デビュー作
『アモーレス・ペロス』で世界の目をメキシコ映画に向けさせ、
その後アカデミー賞を始めとする多くの賞を受賞しながらも、作品ごとに常に新しい試みに
精力的に挑戦している姿勢が評価に値するということで、本年度の受賞が決まりました。
なお、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は東京国際映画祭には
2009年に審査委員長を務めており、それ以来の参加となります。
深田晃司監督は、選考委員からも作品性が若手映画監督として優れている点や、
世界に向けて将来の活躍が期待される日本人監督である点などに加え、映画制作活動以外での
精力的な活動についても評価の声が高く、今年度の受賞者として決定しました。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ:
2000年に『アモーレス・ペロス』で長編映画監督デビューし、同作で第53回カンヌ国際映画祭の
批評家週間部門、第13回東京国際映画祭でグランプリを受賞、アカデミー外国語映画賞にノミネートされました。
以降『バベル』(2006年)、『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)、
『レヴェナント: 蘇えりし者』(2016年)と精力的に作品を発表しアカデミー賞監督賞をはじめとした
数々の映画賞を獲得。最新作『バルド、偽りの記録と一握りの真実』は、本年度ベネチア国際映画祭の
コンペティション部門に選出され、東京国際映画祭のガラ・セレクション部門で上映されることも決定しており、
11月より一部劇場でも公開されます。

深田晃司:
2016年『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞し、
同作で2017年には第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞したほか、
新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営危機に陥るミニシアターが続出したことに対し、
同じく映画監督の濱口竜介氏らとともに全国の小規模映画館支援のためのクラウドファンディング
『ミニシアター・エイド基金』を立ち上げるなど、若手映画監督としての枠を超えた活動もされています。
最新作の『LOVE LIFE』は先日のベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、
満場の喝采で迎えられたのは記憶に新しいことかと思います。

【第35回東京国際映画祭開催概要】

公式サイトはこちら

<開催期間>
2022年10月24日(月)~11月2日(水)[10日間]

<会場>
シネスイッチ銀座、丸の内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、
ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、
マルキューブ、有楽町micro、東京宝塚劇場、東京国際フォーラム(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用

<実施体制>
主催:公益財団法人ユニジャパン(第35回東京国際映画祭実行委員会)
共催:経済産業省 国際交流基金アジアセンター(アジア映画交流事業)、東京都(コンペティション部門、ユース部門)
後援:総務省/外務省/千代田区/中央区/独立行政法人日本貿易振興機構/国立映画アーカイブ/
一般社団法人日本経済団体連合会/東京商工会議所/一般社団法人日本映画製作者連盟/
一般社団法人映画産業団体連合会/一般社団法人外国映画輸入配給協会/モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)/
全国興行生活衛生同業組合連合会/東京都興行生活衛生同業組合/特定非営利活動法人映像産業振興機構/
一般社団法人日本映像ソフト協会/公益財団法人角川文化振興財団/一般財団法人デジタルコンテンツ協会/
一般社団法人デジタルメディア協会
支援:文化庁

<協賛>
オフィシャルパートナー:日本コカ・コーラ株式会社/Prime Video/株式会社カプコン
プレミアムスポンサー:三井不動産株式会社/三菱地所株式会社/株式会社木下グループ
スポンサー:株式会社 アイム・ユニバース/株式会社バンダイナムコホールディングス/大和ハウス工業株式会社/
株式会社 帝国ホテル/株式会社IMAGICA GROUP/株式会社スター・チャンネル
トランスポートパートナー:東京地下鉄株式会社/東京都交通局
メディカルサポーター:ICheck株式会社
コーポレートパートナー:松竹株式会社/東宝株式会社/東映株式会社/株式会社KADOKAWA/日活株式会社/
一般社団法人映画演劇文化協会/一般社団法人日比谷エリアマネジメント/東京ミッドタウンマネジメント株式会社/
DMO 東京丸の内/Ligare
メディアパートナー:株式会社J-WAVE/株式会社WOWOW/日本映画専門チャンネル/ウォール・ストリート・ジャーナル/
LINE株式会社/株式会社つみき/株式会社ムービーウォーカー/ぴあ株式会社/株式会社 ニッポン放送/Variety/
ハリウッド・リポーター(※協力年順)
フェスティバルサポーター:西尾レントオール株式会社/株式会社トムス・エンタテインメント/株式会社クララオンライン/
株式会社レントシ―バー

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