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演劇的フェスティバル「FESTA松本2022」いよいよ開幕 大盛況の前夜祭&串田和美『スカパン』レポート到着

10月1日(土)から10日(月・祝)までの10日間にわたって長野県松本市で開催される演劇的フェスティバル
「FESTA松本2022」が開幕しました。 本イベントは、まつもと市民芸術館の総監督を務める串田和美が、
かねてから構想していた演劇やダンスなどを集めた演劇祭を、自ら総合ディレクターとなって
2021年に立ち上げ、パフォーマンスを日常的なものとして楽しんでほしいという想いのもと、
まつもと市民芸術館を主会場に、市街地を一つの劇場に見立てて行われます。

撮影:山田毅

開幕に先駆けて9月29日(木)に信毎メディアガーデン前にて行われた前夜祭では、
伊佐津カルテットのジャズ演奏に始まり、TCアルプによる司会のもと、『スカパン』出演の
大森博史、小日向文世や、『別役実 三部作』演出の千葉哲也など、各公演の出演者や演出家らが
自らそれぞれの演目を紹介。『バッタの夕食会』出演者と伊佐津カルテットによる劇中楽曲演奏では、
公演の出演者たち、そして足を止めた多くの街の人たちが音楽と共に一つに。
「FESTA松本2022」開幕に向けた祝いの前夜祭を大いに楽しみました。

串田は「FESTA松本2022」開催にあたって、「街と一緒に何かを作ることがすごく大事だと思っている。
街の人たちがふと通りかかって観てくれたらそれで十分だし、いろんな人たちが
いろんな楽しみ方を見つけてくれたらいいんじゃないかなと思います。」とコメント。
「FESTA松本2022」では、今回初参加で第十回市川森一脚本賞を最年少で受賞した
注目の若手演出家・加藤拓也の劇団た組『ドードーが落下する』、
2023年NHK大河ドラマ出演でも話題の千葉哲也演出『別役実 三部作』、
大森博史が主宰する演劇ユニット・Grass919が贈る六つの物語『ミッツアロのカラス』など
珠玉の演劇作品はもちろんのこと、島地保武、酒井はなのユニットAltneu(アルトノイ)による
芥川龍之介の名作を題材にしたコンテンポラリーダンス『杜子春 -Toshishun-』、
日本を代表する振付家たちがコロナ禍に創作した選りすぐりのダンス作品
『パフォーミングアーツ・セレクション2022』などのダンス作品も上演。
さらに昨年に引き続き、松本の名所・縄手通りが10月9日(日)限りの一日、丸ごと劇場になる
「秋の縄手通りカーニバル」にてプロのアーティスト以外にも、市民パフォーマーのパフォーマンスが
投げ銭スタイルで楽しめます。そして今回はフリンジ企画も加わり、様々なジャンルのアーティストたちが参加、
市内のゲストハウスやカフェなどで行われ、FESTA松本をさらに盛り上げます。

10日間で約20プログラムが予定されている「FESTA松本2022」は、
10月10日(月・祝)まで。詳細はFESTA松本ホームページにて確認を。

「FESTA松本2022」URL:https://festamatsumoto.com

【串田和美『スカパン』レポート】

撮影:山田毅

串田のライフワークともいえる作品であり、今回の目玉公演でもある『スカパン』は、
フランスの傑作喜劇「スカパンの悪巧み」を串田が独自の解釈と脚色で再演を重ねてきた伝説の名作。
1994年オンシアター自由劇場での初演以来となる、当時メンバーの大森博史、小日向文世の3人が揃います。
串田の息子・串田十二夜、小日文世の長男・小日向星一も出演と、2組の親子共演も見どころ。
9月30日(金)にはプレビュー公演としてまつもと市民芸術館にて『スカパン』を上演。
前日に行われた囲み会見では、串田、大森、小日向がコメント。
「この組み合わせっていうのはとにかく嬉しい。自分が一生懸命作ってきた
自由劇場の同じ志を持った仲間とこうやってできることってそうはないなと。 幸せなことだなと思う。 」(串田)、
「串田さんがこうして作っている『スカパン』のなんともいえないゾクゾクした世界にうまくリンクしてやってけたら。 」(大森)、
「自由劇場時代、一緒にやってきたこの仲間とゆっくり、もう一度じっくり楽しんで舞台に立ちたい。 」(小日向)と、
元オンシアター自由劇場主宰とメンバーという深く長い関係性の
3人ならではのざっくばらんな空気の中で質問に答えていました。
公演日程の前半はまつもと市民芸術館の小ホールで、後半は劇場を飛び出し
松本城大手門枡形跡広場を会場に野外劇へと変貌。同じ演目でもガラリと雰囲気が変わり、
日が暮れていく松本の街中で、時間によって変わる街の空気や音など
野外劇ならではの楽しみ方ができます。是非、秋の松本と共に楽しんでもらいたい。

今回は、注目の『スカパン』を観劇した演劇ジャーナリストの川添史子氏からレポートが届きました。

撮影:山田毅

「串田和美(まつもと市民芸術館の総監督)が総合ディレクターを務める「FESTA松本2022」開幕直前の9月30日、
『スカパン』のプレビュー公演が開催された。
劇場が薄暗くなると、遠くからカモメの声、そしてざわめき。光が入ると
もやの中から人形のように無表情の人たちの群れが現れ、すれ違い――。
小さな空間が次第に舞台であるナポリの港町に変容し、観客はゆっくりとこの世界へ誘われる。
空の色、光の加減、雲の形が徐々に変化するような“ひと色ではない”感覚は、
この串田版『スカパン』を覆う気分ともシンクロする。

撮影:山田毅

モリエールが描いた原作の見どころは、口がうまくて世渡り上手のスカパンが、
若者の恋の手助けをし、威張った金持ち二人を手玉に取ってとっちめる“悪だくみ”っぷり。
だが串田版は、ただ底抜けに陽気な喜劇ではない。いたずらしたり大騒ぎしたり、
人々と一緒にいる時は明るく振る舞うスカパンだが、犬小屋のような家に戻って一人で過ごす場面などに、
彼の孤独と貧しさがふと垣間見える。合間、合間にインサートされる底辺で暮らす男の「生活感」が、
物語に陰影を与えるのだ。スカパンがアルレッキーノ(イタリアで16世紀ごろに生まれた喜劇
「コメディア・デラルテ」の召使役・道化役)の仮面をつけ、一人無言で踊る場面も印象的。
随所で流れる流浪の民の音楽は、根無草で生きてきたスカパンの、ハードだったであろう人生を思わせる。
左右にサッと引かれ、どんどん場面を変化させ運んでいくブレヒト幕は、舞台にスピードとリズムを与えていた
幕の隙間から役者がちょっと顔を出すのもチャーミング)。

撮影:山田毅

元オンシアター自由劇場のメンバーとして、数々の舞台を串田と共にして来た大森博史
(アルガント役)と小日向文世(ジェロント役)が出演というのもジンとくる趣向。
軽快に動いて、転げ回って、喋りまくるスカパン串田(驚異的な80歳!)と、
終始むっすりとした表情を浮かべるこの守銭奴たちとの味のあるやりとりはユーモラスで、
客席を沸かせる。恋に夢中、青春を謳歌する若者たち、オクターヴ(小日向星一)&イアサント(湯川ひな)、
レアンドル(串田十二夜)&ゼルビネット(皆本麻帆)の2組のカップルも、
周囲が見えない猪突猛進ぶりで笑いを誘う。人生が暮れるのは早い……
このバラ色の頬の子どもたちも、すぐに大人になるだろう!
今回は、串田親子、小日向親子と、2組の親子共演が実現したユニークな舞台でもある。
また、若い頃から串田の元で活動している、武居卓、細川貴司、下地尚子といった
TCアルプメンバーがくっきりと個性の輪郭を見せ、頼もしい戦力として活躍するのも、嬉しく眺めた。
自然と「人生の時間」について思考が至る座組み/キャスティングである。

撮影:山田毅

撮影:山田毅

頼まれるとイヤと言えないスカパンを都合よく利用する若者、使用人に無慈悲な資産家たち。
人間の残酷でエゴイスティックな部分を戯画的に拡大してみれば、ここでも“光と影の行ったり来たり”
随所でピリリと効いてきて、なんとも言えない現実味、どんな時代にもある世界のリアルを映し出す。
めでたしめでたし、絵に描いたようなハッピーエンドにも、少し苦味が混じる。
舞台を見る方たちのために詳細は秘密にしておくが、これまた“ひと色ではない”幕切れである。」

【『スカパン』公演概要】

公式サイトはこちら

<公演期間>
松本公演:2022年9月30日(金)~10月2日(日)、10月6日(木)、10月8日(土)~10月10日(月・祝)
※9月30日はプレビュー公演
水戸公演:2022年10月15日(土)・16日
北九州公演:2022年10月23日(日)
神奈川公演:2022年10月26日(水)~10月30日(日)

<会場>
松本:まつもと市民芸術館 小ホール/松本城大手門枡形跡広場(屋外公演)
水戸:水戸芸術館ACM劇場
北九州:北九州芸術劇場 中劇場
神奈川:KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>

※松本城大手門枡形跡広場での開催中止の決定に関して
本公演は小雨でも上演致しますが、台風や局地的な大雨や落雷などの荒天の場合、公演中止となる場合も御座います。
中止の決定は、当日の13時までに、劇場Webサイトにて発表を致します。
また、公演開催決定後に、天気の急変やお客様の安全が確保されない事態が予想される場合は、やむを得ず中止とする可能性が御座います。
ご来場前に必ず劇場Webサイト内の注意事項と本公演の最新情報をご確認ください。
尚、会場の野外ステージの客席には屋根が御座いません。防寒や雨への対策をお願い致します。

<上演時間>
約2時間(途中休憩無し)

<料金>
松本:
一般4,500円 U18:2,000円
(整理番号付き自由席・税込)

水戸:
S席5,000円 A席3,500円
(全席指定・税込)

北九州:
一般:5,000円 シニア4,500円(65歳以上・要身分証提示)ユース3,000円(24歳以下・要身分証提示)
高校生〔的〕チケット1,500円(枚数限定、劇場窓口・電話/前売のみ取扱、要学生証提示)
(全席指定・税込)

神奈川:
一般6800円 U24(24歳以下)3400円 高校生以下1000円 シルバー(65歳以上):6300円
(U24・高校生以下・シルバーは枚数限定、一般発売8/27よりチケットかながわのみで販売)
(全席指定。税込み)
※未就学児入場不可
※U18(18歳以下)チケットは、当日年齢証明書をご提示下さい。
※車椅子または補助犬を伴ってご入場の方は、チケットご購入時にまつもと市民芸術館チケットセンターまでお知らせください。

『チケット発売』
好評発売中

「プレイガイド」
まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)
[窓口・電話]0263-33-2200
[WEB]芸術館チケットクラブ(要事前会員登録)
※発売初日は窓口販売なし

チケットぴあ
[店頭]セブン‐イレブン
[WEB]https://t.pia.jp/

「問い合わせ」
松本:まつもと市民芸術館チケットセンター 0263-33-2200(10:00~18:00)
水戸:水戸芸術館ACM劇場 029-227-8123(10:00~18:00月曜休館)
北九州:北九州芸術劇場 093-562-2655(10:00~18:00)
神奈川:チケットかながわ 0570-015-415(10:00~18:00)

<出演者>
串田和美
大森博史
武居卓
小日向星一
串田十二夜
皆本麻帆
湯川ひな
細川貴司
下地尚子

小日向文世

<STAFF>
原作:モリエール『スカパンの悪巧み』
訳:内藤俊人
潤色・演出・美術:串田和美
照明:齋藤茂男
音響:市來邦比古
衣裳進行:中野かおる
演出助手:長町多寿子
舞台監督:足立充章
松本公演主催:一般財団法人松本市芸術文化振興財団
水戸公演主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
北九州公演主催:公益財団法人北九州市芸術文化振興財団
神奈川公演主催:KAAT神奈川芸術劇場/まつもと市民芸術館
北九州公演共催:北九州市
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
松本公演後援:松本市/松本市教育委員会
企画制作:まつもと市民芸術館

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