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東京2020組織委員会 最後の理事会を開催

画像:東京都提供

東京2020組織委員会(以下、組織委)は、2022年6月21日(火)、東京都内某所にて第50回となる理事会を開催しました。

【理事会冒頭の様子】

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2022年6月30日(木)をもって東京2020大会終了後の残務の結了により解散し、清算法人へと移行する東京2020組織委員会。
50回目にして最後の開催となる理事会には、橋本聖子組織委会長、小池百合子東京都知事、
山下泰裕組織委副会長/日本オリンピック委員会(JOC)会長等が参加。

【記者会見】

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理事会終了後、18時30分頃より、橋本会長と武藤敏郎組織委専務理事・事務総長が参加しての記者会見が行われました。
冒頭、2014年1月の設立から約8年5か月、9日後に迫った組織委の解散に際し、橋本会長と武藤専務理事・事務総長からのコメントが。

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橋本会長「こうしてプレスの皆さんの前で記者会見を行うのも本日が最後となります。
コロナ禍の大会にあっては職員関係者一同、会場内や会場の外でも感染者を増やすまいと国民の皆様に
国民の皆様にとって安心・安全な大会の開催に成る様、決意を持って臨んで参りました。
大会後の報道機関の世論調査では8割に近い方が開催をして良かったという回答をされています。
大会前には多くの厳しいご意見も頂戴いたしましたが、そうした声に応えるべく、安全・安心な
大会の実現に努力をした結果、この様な評価に繋がったものと思っております。
2014年1月24日の組織委の創立からおよそ8年半。最初は44人でスタートした組織委員会は、
昨年の大会時には7,000人規模となり、約7万人のボランティアと約20万人のコントラクターを抱え、
本当に大きなチームとなりました。今日時点では職員数は161人となっております。
私は組織委の会長として大会開幕5か月前からご一緒をしてきた訳でありますけども、
この長い旅路において組織委の設立時からチームを率いて来られた武藤事務総長には本当にお疲れ様でしたと申し上げたいと思います。
東京2020大会の重要なレガシーの一つは「人」であると私は思っております。
多くの関係者は元より、パンデミック後初のグローバルイベントとなった東京2020大会に
セカイが集った経験を沢山の方が記憶されました。一人でも多くの方にこの東京2020大会という旅路から
何かのヒントやキッカケを得ていただき、この先の豊かな人生の実現とスポーツを通じた社会への貢献に
一層の理解とご協力をいただける事を願っております。そして最後に東京2020大会に出場したアスリートの皆さんにとって、
これ程までに社会の中の自らの役割、スポーツの価値について悩み考え抜いて大会に向き合った時は
これまで無かったかと思います。スポーツ界はスポーツを通じた社会の変革に挑み続ける中で、
今大会を得難い経験として動き始めたポジティブな変化を推進しなければならないと思っています。
その中心でアスリート自身が10年後20年後の将来のスポーツ界をしっかりと背負っていく事を期待しております。
私も組織委会長という役割をいただいた事を胸に刻んで、この先もスポーツ界のその一端の責務を果たし、
東京2020のレガシーを次世代に継承していく事に尽力して参りたいと思っています。」

武藤専務理事・事務総長「8年半、事務総長を務めました。この間色々な事があり、
長い8年半とも考えますし、あっという間に過ぎた8年半だった気も致します。
いずれにしても大変に良い貴重な経験をさせていただきました。
東京2020大会はコロナ禍で人類が経験をした事の無い、今までと全く違った大会となりました。
最大の特色はほぼ無観客だったという事で、徹底的な簡素化を図った大会だったという事であります。
我々は勿論最後まで有観客の開催を望んで準備を尽くしましたが、結果的には無観客を選択せざるを得ない事象となり、
その結果、改めて多くこの事を考えさせられた大会になったと思います。。
一年の延期や様々な困難を乗り越えてオリンピック・パラリンピックという最高の舞台を実施して
それを人々の目に見えるものにしたという事は、大変価値のある仕事であったと信じています。
多様性を受け入れる寛容さ、ジェンダー平等、持続可能性等、我々は東京2020大会のレガシーの視点など、
色々と考えております。この事は観客の有無にかかわらず、重要な大会の意義になったと考えております。
レガシーがどの様に継承されて日本の社会を変革していくのかはスポーツ界や開催都市、国をはじめ
東京2020大会に関わった全ての関係者の腕にかかっております。社会の前向きな変化が継続して
推進される事を切に願いたいと思います。最後に世界のオリンピック・パラリンピックの関係者の皆様に
心から御礼を申し上げたいと思います。」

その中で公表された組織委の収支は約6,404億円(IOC負担金:868億円、TOPスポンサー:569億円、国内スポンサー:3,761億円
大会の延期に伴う保険金:500億円)と発表され、国と東京都が負担する大会経費の総額は約1兆4,238億円と発表され、
2021年12月公表された大会経費の見通しから292億円の減額を果たしたとしています。
また、大会の延期やコロナ対策等の予期せぬ追加費用が生じた上でなおIOC・IPCの協力を得た効率化・簡素化の
徹底した取り組みによって、2016年12月に初めて大会経費の全体像を明らかにした大会経費V1の1兆5,000億円
(予備費を除く)を762億下回る額で大会を実施する事が出来たともしています。

大会経費の主な部分としては、新国立競技場の整備:1,670億円、5か所の恒久施設の整備:1,822億円、
会場における仮設オーバレイの施工・撤去:2,827億円、大会ルックの製作・実装等:37億円、会場使用料等:522億円
会場光熱費:50億円、大会関係者輸送用バスの車両調達・運用及び運行管理:156億円、
大会関係者輸送用フリート(乗用車)の車両調達・運用および運行管理:118億円、
会場運営:161億円、競技運営:99億円、飲食の提供:145億円、選手村の運営及び維持管理:164億円、
聖火リレー:98億円、開閉会式:153億円、大会関係者の宿泊費等:132億円、チケット販売システムの開発及び運用:90億円となってます。

そして東京2020大会の公式報告書が完成。その中でIOCより東京2020オリンピックの参加選手数は
11,420名(205の国・地域のNOC+難民選手団)との確定数値が発表されました。

最後に東京2020大会の総括と所見、そして将来のオリンピック・パラリンピックに向けて…として、
大会の『簡素化・軽量化』『多様性』『参画』の4つを大きな達成ポイントとして上げ、
オリンピック・パラリンピックの変わらなぬコアはスポーツであり、アスリートであり、平和の祭典。
この価値を継続させる為には1964大会と2020大会で如実に表れた様に、時代の変化に合わせて
『簡素化・軽量化』『多様性』『参画』などが求められる。(社会・時代の変化⇒オリンピック・パラリンピック)
逆に、こうした変化を前向きに取り込む事により、社会の持続的発展の礎になり得る。
義務感ではなく、ポジティブに受け止めていく必要。(オリンピック・パラリンピックの変革⇒社会・時代)
「スポーツには世界と未来を変える力がある」(東京2020大会ビジョンより)。と記しています。

そして質疑応答へ

Q:東京2020大会のレガシーを根付かせる為に何が重要か?

橋本会長「1年間の大会延期とコロナ禍での開催という、誰も経験した事のない大会だったと思います。
その時に私が一番感じたのは水際対策から、命と健康、安心と安全を築いていく為には、
全ての省庁・自治体・全アスリート・関係者といった全ての方が一体とならなければ成し遂げられなかった大会というのは、
過去には無かったのではないかなという風に思っておりまして、そういった事がこれからしっかりとレガシーとして
夫々の自治体ですとかアスリートの団体が、スポーツというものと一つの絆として繋げていく事によって、
新たな参画に結びついていく、そういう所が非常に重要になると思います。
勿論、東日本大震災からの復興オリンピック・パラリンピックという事になりましたけども、
やはりそういった事もこれから国としてもスポーツ界としても連携をしながら何処が何を引き継いでいくのか
という事も、所謂検証をする、分配方式、そういったものをこれから政治という立場においても
しっかりとサポートをしていきたいという風に思っています。」

Q:東京1964年大会は若者に平和の意味や、日本が世界と肩を並べたという希望を与えた。
東京2020大会は次世代にどの様な灯になって欲しいか?

橋本会長「これから世代の方々に東京2020大会を見て感じた、そして将来は可能性があるんだと事を
感じていただけたらありがたいなと思いました。東京1964大会はやはり戦後の日本の復興の姿を
しっかりと見ていただいて、そしてそれが起爆剤となって経済大国になっていくんだという、
非常に大きな力を持ちえた高度経済成長を遂げていく施策だったんだいう風に私は理解して、
その後を来た世代でありますけども、これからの東京2020大会の真の時代というのは、
正にこれから持続可能な社会をどうやって築いていくのかという事、そして大会理念である
共生社会、あるいは多様性と調和、そして誰も取り残す事の無い社会、そういった事が
パラリンピックを通じて特に若い世代の方にはその持続可能性という物が非常に築きとなって、
根付いていただく事になるのではないかという風に感じまして、そういった事もこれで”やった”という事だけではなくて、
この大会に何処に意味と価値があったのかという事を言い続ける事を続けていきたいという風に思っております。」

Q:今の質問で持続可能性という言葉が出たが、今後のオリンピック・パラリンピック
(IOC・IPCに対しても)にどの様なあり方を期待するか?

橋本会長「私はやはり、真のオリンピック・パラリンピックの融合が必要だという風に思っています。
この組織委もオリンピック・パラリンピック組織委員会という位置づけの中でしっかりとその構築に
取り組んできたとおもいます。今日の最後の理事会でも出た意見ですが、やはり裾野の部分でオリンピックと
パラリンピック、あるはスポーツと障がい者スポーツ、そういった物が本当にしっかりと融合をしていかない限り、
この東京2020大会のレガシーは、生き続ける事は無いのではないかという風に私自身は感じておりまして、
これからそこが重要だと思っております。そして今大会は1年の延期という事で、今まで誰もやった事が無い事だからこそ、
IOCやIPCは変化を恐れず、これからどの様に持続可能はオリンピック・パラリンピックを継続していくのかというのを
気づいた時ではなかったかなと思っておりますので、これからオリンピック・パラリンピックという物自体が
どの様に社会に貢献をし、そして世界平和に貢献をして、そして持続可能な大会となる為にはどうしたら良いのかという事を
しっかりと議論を重ねていく事が必要だと思いますし、東京2020大会はその第1歩になったのではないかと私は思っております。」

Q:重要なレガシーの一つは「人」と話されたが、大会運営に関わったボランティアスタッフ等に今後どの様に活躍して欲しいか。

橋本会長「何といっても人の絆、繋がりが無ければこの東京2020大会は出来ませんでしたし、
特にボランティアの皆さんの活躍という物に私達は救われたという風に思っております。
残念ながら一部有観客、そして殆どが無観客という事で、実際にオリパラを見ていただく機会というのは
少なかった訳ですが、ただ、そこにテレビやあらゆるもので大会を感じていただいた方達、
そして特にパラリンピックを見ていただいた方々からその後に寄せられたコメントというのは、
私自身は本当に心を打つものであったと思います。人が頑張る姿、そしてあれだけのパフォーマンスを
する事が出来る方達の思いという事と、そしてその背景。そういった事を一つにした時に
自分自身も何か出来るんじゃないかと気づきがあの時、確実にあったという風に思います。
その事をこれから子供達がどの様に将来の自分自身の可能性を見出していく事が出来るかという
教育にも繋げていく。東京2020大会がこれからの人づくりの一翼を担うものであり続けなければならないというのが、
今回、私が感じた人という部分に対しての思いであったと思います。」

Q:約8年半に渡った組織委員会の長を務めた本音の部分は?

橋本会長「東京2020大会が全て終わった直後の記者会見でも同じ事を申し上げたかなと今、思い出したんですけども、
組織委が独自の医療チームといいますか、様々な医療関係者にご協力を頂いて、医学的にも科学的にも研究を重ね、
知見を結集してあらゆる準備をして来ました。最後は尽力をいただいた関係者の皆様方から、組織委のコロナ対策と
準備をした全ての競技場は一番安全な場所であるという風に評価をいただきました。
それでも無観客にせざるを得ない状況になったという事に関しては、私は本当に残念ではありますけども、
その事をしっかりと理解していただいたチケットホルダーの方々にも感謝をしたいという風に思いますし、
今もやはりそういった意味において悔いはあるんですけども、ただあの時に絶対に競技場は安全ですから
大丈夫なので有観客にします、というのでは、今はないという風に私は思っております。
あの時にそういう決断をしなければ組織委は前に進む事が出来ませんでしたので、そういった事を
理解をしながら。ただ、その事がこれがどの様な場面であっても、どの様な決断を下さなければならない、
という事に関して、今後、スポーツイベントだけではなくて、多くのあらゆる方達が集まる中で
何か基準になるのかという事の組織委がやって来た経験を活かして頂ける様な形にしていくべきではないかなと感じております。」

Q:先程出た真のオリパラの融合の形とは?

橋本会長「一般的なんですけど、パラリンピックを先に開催してオリンピックを後にしたら?等、
あらゆる意見は今まで沢山有ったんだと思います。それでもオリンピックが先で、準備をしてパラリンピック、
という風に会場設営等を含めて変えていかなければいけないという状況の中でこの姿というのは
私は余り変わっていかないのではないかなという風に思うんですけども、私自身が思うこの融合というのは、
今後全ての人がスポーツに親しむ事が出来る事、そして全ての方々がやりたいと思った時に障害を持っていても、
そしてこれから障がいという物がスポーツをやる上、社会に出る上において障害にならない様な
社会を築いていこうとする事にスポーツ界が一体となってその一助を担っていくという考え方が
重要ではないかという風に思っている所です。そういう意味では”トップレベルの融合”、
教育の場での健常者と障がい者の方達のスポーツの融合という事、そして地域社会において
健常者と障がいを持った方のユニバーサルデザインの街づくりをする事によって、
誰もが外に行く事が出来る社会を、スポーツがそれを一つにする力が確実にあるという風に
私は確信を東京2020大会で持ったものですから、もっと大きな社会の中で考えた時の
オリパラの融合を実現していく事をこれからやっていかなかければ、真のオリパラの融合には
ならないのではないかなと感じております。」

Q:森喜朗前組織委会長への思いは?

橋本会長「やはり、この東京2020大会を勝ち取る時、そして勝ち取った後に組織委を設立する時、
そしてずっと長い間、森会長の存在という物なくして東京2020大会は無かったと私は思っております。
政治的な部分においても、今、社会的にもスポーツ界においても、全てにおいて精通した考え方の下で
トップリーダーとしての役割を常に果たしていただいていた、困難な時にも前に出るという事が出来る
森会長が居たからこそ、東京2020大会と組織委は前に進んでいく事が出来たんだと思っております。
その中で直前ではありましたけども、私が大会の5か月前にしてそのバトンを継がせていただく事になりましたけども、
森会長が築いてきた物があったからこそ、私は出来たんだと今も感謝をしております。」

Q:2030札幌冬季大会を招致しているが、東京2020大会で出たネガティブな面をおよそ8年間で払拭出来るのか?

橋本会長「この東京2020大会の意義と価値という物がしっかりと伝わらない限り、札幌市民、
あるいは道民の皆様の支持率も上がっていかないのではないかなと私は思っております。
スポーツをやる、人が集う。その時に札幌、北海道、あるいは日本の良さという物がしっかりと
発信出来るという事、それがひいては将来の北海道の食や観光、全ての物への一つの大きな観光都市であるという事を含めて
説明をする事が非常に重要ではないかと思っております。今、プロモーション委員会においては、
次の2030の意義と価値というものを発信をしていただける事に私は期待をしている所です。」

Q:1兆4,238億円の最終的な大会経費についての評価は?

武藤専務理事・事務総長「かつて我々が見積もった金額からはいずれも少ない金額に着地する事が出来ました。
そういう意味で我々が想定をしたものよりも、少ない枠内で着地させることが出来たと評価しています。
ただ、総額としてそれが大きいものなのか、小さいものなのかという話になると、中々簡単ではありません。
比較の仕方が中々無い訳であります。それぞれの国の経済事情、物価事情、労賃の事情等等がありますので、
よく言われる様に先進国の場合には経費がかかりやすいという問題もあります。
我々はきちっと経費の積み上げをしてまいりました。その上で1年延期になり、しかもコロナ対策を
講じなければいけなくなった。それだけでざっと2,000億円近い追加経費がかかったという風に考えています。
一方で無観客になったので、それは望む事ではありませんけども、無観客に伴って医療が少なくて済むという事もありました。
海外から来る関係者の人数も相当に抑えましたので、これも経費削減の方策でありました。
簡素化に向けて様々な工夫を致しましたので、そういう結果、経費の増加を抑える事が出来たと考えています。
増加する経費をそのままにする事無く、削減によって対応したというのが、予算の姿としては一応、
我々の対応が成果を挙げたというか、やるべき事はやったと評価をしております。」

Q:持続可能性という意味で、今後のオリパラの開催都市の負担はどの様にあるべきか?

武藤専務理事・事務総長「開催都市がオリンピックを開催する物であり、基本的に組織委は
その運営を託されるという位置付けであります。ですから運営経費は組織委員会が出来る限り
自己努力で捻出をするという事だと思いますけども、施設関係の経費は開催都市において
準備をするというのが一般的な方針であると私は理解しています。
初めて開催をする様な都市においては、積極的にそれをチャンスに施設整備を図り、ハードのレガシーを残す、
そういう考え方があると思います。一方で複数回の開催経験がある都市は既存施設を有効活用して
大会の為のハードのコストを出来るだけ削減するという事が海外としては成り立つと思います。
どの様な考え方で開催都市がオリンピックを招致するのかという事にかなりいぞんしてくるのではないかと思います。」

Q:森前会長が辞任する際に隣にいた本音の心境、また無観客開催についての心境は?

武藤専務理事・事務総長「森会長が辞任せざるを得なくなったという状況は、極めて短期間に批判が沸騰して
結果的に辞めざるをえなくなったという事でありまして、我々は大会開催の数か月前にして
会長が変わってしまうというのは予想だにしない事でした。そういう意味で私も非常に驚いたというか
予想外な事が起こって、どうしたら良いかという対応に苦心をしたというのが本音の所であります。
事柄が事柄なだけに、発言そのものを擁護するという事は中々難しいという判断を致しましたが、
その結果、新しく橋本会長が就任されて僅かな空白が空きましたが、私はその空白を最短にする事が
事務総長の役割だと思いました。人事の事ですから100%透明というのは難しいと思うんですけど、
しかし、極めて透明性の高い選任手続きが出来たと思っております。何か透明性の無い形で
後任が決まるという事になると、そこにまた新しい問題が生じてくるので、そのような状況を
惹起という事は組織委として避けなければならないと思いました。
それから無観客は正直な所、海外からのお客様を迎え入れるというのは、あの段階(7月上旬)では
殆ど困難だと思いました。水際対策が極めて厳しく行われていたので、水際対策が7月には無くなるだろうという、
極めて楽観的な事にならない限り、入れる事は出来ません。国内観客は我々は正直な所、
観客を入れる為にどの様にしたら良いかを一所懸命に模索致しました。
わざわざ無観客でなければならんと言った方は感染症の専門家でもおられなかったと思います。
相当注意深く感染症対策をやる必要がある。その為には無観客にするのが一番望ましいけども、
無観客にしない時は慎重に考えるべきだというのが専門家の意見でありました。
しかし、あの当時の世論は感染症に対するリスクの感覚が非常にキツくなっていた時期なので、
特に7月12日から緊急事態宣言になってしまったという決定的な事情がございますので、
あの時に無観客にせざるをえなかったのはやむをえなかったかなと思います。」

Q:東京2020大会は人間や社会について何を教えてくれたのか?

武藤専務理事・事務総長「組織委としては、やるかやらないかの判断をする立場には立っていない。
それを判断する人は開催都市の区議長及び国の代表者である総理大臣だという風に思っていました。
我々に与えられた使命はどうしたら開催出来るのか、その工夫をするのみだと思います。
しかし、世の中ではそもそもやれるのか、やれないのかについて疑問が払拭しきれなかったという事だったのではないかと
理解しています。少なくとも世論調査を見ると開催前の6月には半分を超える方が中止なり再延期なりをすべきだと
言われていたのは事実であります。しかし我々は開催の為の諸々の工夫をプレーブックを手にしてから段々と
具体的にアスリートやIOC関係者、メディアにご覧いただいた時に厳しいけれども、これは何とかなるんじゃないかという風に
皆様に思っていただいたと思います。あれでは不十分だという意見は私は余り無かったと聞いています。
そして開催をした結果、大勢の方がやって良かったと言っていただいていると。
こういう一連の事実を我々はどんな風に考えたら良いのかというのが私の問題意識です。
物事はなにかにつけてネガティブな部分とポジティブな部分は必ずある。その2つをどの様に比較考慮して考えるのか、
ネガの部分を出来るだけ小さくしてポジティブの部分を出来るだけ大きくする努力をする事だと思います。
色んな意見があったのは事実でどの様な事が絶対に正しいのかは私は正直な所、分かりません。
ただ、ネガな部分を出来るだけ少なくしてポジティブな部分を尊重して実際に開催をした所、
人々が反応していただいた、内外のアスリートが大会中止になったら自分達はどうなるのだろうと思っていたけれど、
活躍の場を与えてくれてありがとうございました、という事を言っていただいたという事であります。
色んな言い方があるかと思いますが、危機管理が如何あるべきか、あるいはそういう言葉にあたった時に
どの様な行動を我々はすべきなのかという、一般論として有意義な事だったのではないかと。
それがオリンピックという特殊な舞台で起こった事ではありますけども、大きな意味を持っているんじゃないかと思います。
今日、理事の方の中から「今の世界は平和ではないから平和の祭典をやる意味があるのか?」という事を
言われた人がいました。私は印象深く聞いたんですけども、コロナで分断されてしまった世界だから
連帯を訴えるこのオリンピックというものが有意義なんだ、という事を言われる方もいる訳なんですよね。
そういう問題を皆さんが考える国民的な経験をしたのではないかと思います。」

東京2020組織委員会の公式サイトはこちら
※(2022年6月30日(木)18:00をもってサイト閉鎖)

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