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2022年6月上演「鼓童浅草特別公演2022『翔走-Shoso-』」出演者 前田順康氏インタビュー

1981年、ベルリン芸術祭で鮮烈なデビューを果たし、以来、公演数は世界53の国と地域で6,500回以上を数え、
現在、日本のプロフェッショナルの公演団体として最も数多くの海外公演を行っている、
昨年創立40周年を迎えた太鼓芸能集団「鼓童」。太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見出し、
現代への再創造を試みる鼓童は、劇場公演のほか、小中高校生との交流を目的とした「交流学校公演」や、
ワールドミュージック・クラシック・ジャズ・ロック・ダンスパフォーマンスなど、異なるジャンルの
優れたアーティストとも積極的に交流を図り、世界各地で様々な形で太鼓文化の普及と発展に努めてきた団体です。
2021年より約1年間に及ぶ改修工事を終えた浅草公会堂で3年振り、そして2013年から開始した浅草での特別公演も
今年で10年目を迎え、この特別な舞台「翔走」、浅草公演初演出の鼓童副代表・阿部好江が務めます。

「三宅」「千里馬」「Jang-Gwara」「大太鼓」など鼓童の歴史ある演目から住吉佑太や池永レオ遼太郎、前田順康など
今の鼓童を象徴するサウンドメーカーによる舞台初披露の演目まで全15曲が披露されます。困難な時期を過ごす中で、
蓄えたエネルギーや新しい創造の世界を表現し、佐渡から海を越えて浅草のシンボルの1つでもある浅草公会堂での
久しぶりの開催。初夏の浅草にどんな音が響き渡るか、濃密な2時間の公演に期待が高まります。

公演を1ヶ月後に控えた5月某日、東京都内某所にて「鼓童」メンバーであり、今公演の作曲を手掛ける前田順康さんへのインタビューを行いました。

【前田順康氏インタビュー】

Q:コロナ禍となって早二年半、「創立40周年ツアー 鼓童ワン・アース・ツアー2022〜童(わらべ)」の
ツアーの真っ最中だが、自身が感じる手応えは?

前田さん「一昨年、新型コロナウイルスが広がった時は完全に活動を止めていたので、そこから徐々に再開をしていく中で、
やっぱりお客さんの前で演奏をする事の喜びを凄く感じます。
ただ、去年や今も少しそうなんですけど、再開したので皆来てね!と大々的に言い辛いというか、
色んなアーティストさんもそうですが、無理が無い範囲で来て下さいという風にしか言えないのが
ちょっと残念ではあります。でも徐々に明るい感じになってきています。
コロナ禍で僕等が劇場での活動を止めている期間には色んなコンテンツ、
例えばYouTubeで演目の動画を上げたり、レコーディングをしてアルバムを出したり、
無観客でのライブをしたりする中で、何か、新しい発見がたくさんあったというか。
太鼓を生音で聞いてもらってナンボだと思って僕等はやってきましたけど、それが出来ない中で
どうやって楽しんでもらうかというのを色々と皆で模索をした期間がありました。
ゆっくり太鼓と向き合えてから再開した今回の「鼓童ワン・アース・ツアー2022〜童(わらべ)」ですので、
そういう意味では僕等も新しく太鼓の魅力を感じ直して、パワーアップ出来ているなという感触でやっています。」

Q:昨年の東京2020パラリンピックの開会式にて15名の「パラ楽団」の一人として演奏をした経験が自身に与えた影響は?

過去公演の模様 撮影:岡本隆史

前田さん「パラリンピックの開会式もそうでしたけど、それ以前に僕達の公演も無観客で上演したりという事があって、
コロナ禍以前は目の前にいる人と対話をする様に、コミュニケーションを取る様に太鼓の演奏が出来ていたんですよね。
例えば、雨が降っているとお客さんが不快な心理状態で会場に来られるじゃないですか。そこを如何楽しんでもらおうとか、
今日は客席の反応が良いからこういう事をしちゃおうとか、そういうのがライブらしくて楽しかったんですけど。
和太鼓は元々、ショーやエンターテイメントの為に存在していた訳ではなく、神社等にあるじゃないですか。
例えば雨乞いとかもそうですけど、音が大きいから神様まで届くというのを信じて日本人は太鼓を叩いてきているので。
本来の太鼓は自然や目に見えない対象に向かって演奏していたんだろうなというのを、それらの無観客での演奏を通して感じました。
その感覚、目の前にいるお客さんプラス、森羅万象に向かって演奏をするみたいな気持ちが自分の中に生まれたというか。
それがパラリンピック開会式の時は特に強くて、大会の意味合いがそうですが、
生きとし生けるもの全てをリスペクトしたいと思う事って、日常生活ではあまりないですよね?
それについて考える機会をいただけたなと思います。大きい舞台でやった、注目をされた舞台でパフォーマンスしたという事よりも、
自分自身が、人が生きる事、社会のあり方とかを考えられたというのが自分の中で大きな糧になった感じです。」

Q:過去、「ブルーマン・グループ」と鼓童とのコラボが行われたが、現シルク・ドゥ・ソレイユ・ブルーマン・グループの
ミュージックディレクター、バイロン・エステップ氏は2011年のコラボ以来、鼓童はブルーマンに非常に大きな影響をあたえていると話していた。
ブルーマンに鼓童が影響を与えた様に、他団体とのコラボで鼓童が得た物は?

前田さん「太鼓に対する捕らえ方が、自分達だけでやっていると凝り固まっていくじゃないですか。
太鼓ってこういう物、鼓童の表現ってこういう物だよね・・・と、良く言えば定番ですけど、
そういう所に落ち着かないチャンスだなと他のアーティストとの共演の度に思っていて。
太鼓の捕らえ方もジャンルが違えば異なりますよね。「太鼓ってこういう事は出来ないの?」とか、
「太鼓のこういう音が良いと思うよ」と伝えてもらったりとか、逆に鼓童自体も鼓童の良い所は
こういう所なんじゃないかというのを共演・共作すると外からの目で僕等の事を見てもらえるし、
僕等自身もそれを受けて見つめ直せるので、鼓童が自由に太鼓と向かっていく為には、
外部の人達とやる事は凄く必要ですし、それが今までブルーマンを含めて結構盛んにコラボをして来たから、
今の鼓童の表現が、他の太鼓グループとは違う自由な所にいけたんだなと思っているので、
その自由さを保つ為に大切な機会になっているかなと思います。」

Q:その自由さとは、40年を超える伝統を持ちながらも常に新しい音作りへの挑戦をする鼓童の意志なのか?

前田さん「僕等は鼓童が発足した時の伝統や『この演目を守っていこう』と言うつもりではやっていないので。
メンバーも入れ替わりますし。勿論、お客さんに愛してもらっている定番演目のクオリティは保っていっていますけど、
それを続けていくという事が、単純に同じ事をやるというのではなくて、その時代時代に合わせて
喜んでもらえる物を作る事が僕は『継承』だと思っているので、常に最先端であり続ける事が大事だと感じています。」

Q:自身は熊本県菊池市出身との事だが、九州男児の血、生まれ育った地の風土等が鼓童でのパフォーマンスや作曲に作用していると思う部分は?

過去公演の模様 撮影:岡本隆史

前田さん「音楽的に何かがあるなというのは感じていなくて、住んでいた地元にお祭りがあった訳でもないですし、
太鼓をやっていましたけど、何かの伝統芸能をやっていた訳じゃなく、創作の太鼓のグループだったので、
音楽的な土台にはあまりなっていないかなというのが正直な所です。
でも、感性という意味では、九州だからとかじゃなく、誰しもそうであるように、
自分が育った街とか見聞きした物って、自分の感性になっていると思います。
具体的に「このリズムがあの時聞いたリズムだ!」とかはないんですけど、何か物を作って行く時に
自分が育った田舎の山なのか、川なのか、空気なのか、家族なのかが自分にしかない感性になっていると思うので
凄く大事にしたいなと思います。九州だからこれ、という風にはお答えできないんですけど、
自分の育った所が広い意味で感性に影響しているなと思います。」

Q:3年ぶり、そして自身5度目となる、来る6月の浅草公会堂での公演だが、浅草の地に対する思い入れは?

前田さん「浅草って、街が人を作って、逆に人が街を作るという、双方の影響がある街だなと思っていて、
人も温かいし面白いし、街も楽しいし。「この街だからこの人がいるんだな」と思いますし、
この人達だからこの街がつくられるんだとも思います。
街と人とのエネルギーがどっちも強いけどバランスが取れているみたいな。
そういう所が浅草の良い所だと僕は感じていて、そういう街で演奏が出来るのは嬉しいですよね。」

Q:三社祭等、太鼓の音に親しんでいる浅草のお客さんに公演では特にどんな部分を見て欲しいか?

過去公演の模様 撮影:岡本隆史

前田さん「僕等は普段、ツアーで色んな街に行くんですが、日々転々としているので、
特定の街をイメージして作品を作るという事がやりづらいというか中々無いんですね。
今回の『翔走-Shoso-』は浅草特別公演なので、浅草の人と浅草の街で観てもらう事を意識して作られた作品です。
単純にそれが他の鼓童の作品と大きく違うので、鑑賞していただく中で、「浅草っぽい」というと変ですけど、
浅草の街と雰囲気がしっかり合っているのを感じて頂けるかなと思っていますし、
僕の曲も具体的に浅草のどこの場所、どの時間帯というのをイメージして書いているので、
終わった後に街を歩いたら、その余韻が残っている公演になっているかなと思います。」

Q:具体的に『翔走-Shoso-』の為に書かれた曲とは?

前田さん「今回演奏される3曲のうち2曲は浅草の事を想った曲です。
浅草の街の感じ、浅草が夕方になっていくような時間帯に感じる空気とかをイメージしています。
「興(おこし)」という曲は現在ツアー中の『童』の為に書き下ろした曲で、
これは佐渡を題材とした演目なんですよ。それを今回の『翔走-Shoso-』に向けて
アレンジをし直しました。」

Q:浅草特別公演『翔走-Shoso-』にかける思い、そして浅草を含む来場者への思いの程は?

前田さん「先程の通り、普段のツアーで行っている作品とは違って本当に浅草の為に作ったというという所が一つ、
楽しんでいただけるかなという所と、あとは街と音楽との結びつきを感じていただけると嬉しいです。
例えば僕の地元は凄く田舎ですけど、そこに住んでいたら多分、パンク・ロックはやらないだろうな・・・みたいな。
逆に東京に住んでいて、鼓童みたいな音楽は生まれないだろうな・・・というか。街と音楽って、
クラシックが合う街、騒がしい音楽が合う街とか、日常で意識しないけどあると思っています。
そのように、音楽と街の結びつきに関係が有ると思うので、それを凄く意識して今回、僕は曲を作りました。
音と街の関係を楽しんで感じて欲しいですね。」

Q:鼓童がこの団体とコラボをしてみたい、この地で公演をしてみたいという個人的な願望は?

過去公演の模様 撮影:岡本隆史

前田さん「色んな離島へ行ってみたいと思います。
例えば青ヶ島(伊豆諸島)とか簡単にはいけないじゃないですか。これだけ交通が発達している時代でも。
僕等は佐渡島を拠点にしているんですが、住んでいる人、特に子供達がアートや島の文化に触れる機会が凄く少ないなと思っていて。
同じ離島を拠点としているものとして、全国の離島を周る様な公演をしてそこに暮らしている若い人や子供達に
芸術に触れてもらえる機会を作れたらな、というのが目標ですね。」

最後に来場者へのメッセージを。

前田さん「公演が実際に近づいてきて、お祭りが近づいて来ている時の様な高揚感と緊張感が
鼓童のメンバーの中に充満して来ているのを最近感じています。高まったエネルギーと浅草の街が元々持っている
エネルギーとがぶつかり合いつつも、融合しつつ、みたいな。そういう作品になると確信しているので、
楽しみにしていて欲しいです。また、今回のタイトルが『翔走-Shoso-』で、どちらも駆ける(はしる)という意味です。
初夏の浅草にピッタリの爽快感、疾走感のある舞台で皆さんの夏の始まりにピッタリだと思うので、
楽しみにして頂けたらと思っています。」

【前田順康氏プロフィール】

生年月日:1996年2月22日
出身地:熊本県菊池市

2014年研修所へ入所。2017年より正式メンバー。舞台では主に太鼓を担当、最近は踊りにも挑戦し、表現の領域を広げている。
「屋台囃子」、「三宅」、「剣舞」など、鼓童の代表的な演目をしっかり打てる足腰の強い太鼓打ちを目指し、
ひたすら稽古に励む。周囲から愛される朗らかな笑顔の持ち主。2020年からは交流学校公演のチームリーダーとして、
出演に加え構成を担当。作曲や外部指導も行い活動の幅を広げている。ソロ活動として2021年8月、東京2020パラリンピック開会式に出演。
2022年1月2日 NHK Eテレ「へんテナ」の音楽に太鼓で参加。
2022年3月AR三兄弟「バーチャル身体の祭典 VIRTUAL NIPPON COLOSSEUM」に出演。

【鼓童浅草特別公演2022『翔走-Shoso-』公演概要】

公式サイトはこちら

<公演期間>
2022年6月23日(木)~6月26日(日)

<会場>
台東区立浅草公会堂

<上演時間>
約2時間(予定・途中休憩あり)

<料金>
7,000円
(全席指定・税込み/前売・当日共)
※未就学児童入場不可

『チケット発売』
「プレイガイド」
チケットスペース:Tel:03-3234-9999(オペレーター対応)
チケットスペースオンライン:https://ticketspace.jp/top
チケットぴあ (P コード:209-719):https://w.pia.jp/t/kodoasakusa2022/
ローソンチケット (L コード:36216):https://l-tike.com/play/kodoasakusa2022/
イープラス:https://eplus.jp/kodoasakusa2022/
浅草公会堂:窓口販売のみ(Tel:03-3844-7491)

「チケットに関するお問い合わせ」
鼓童チケットサービス Tel. 0259-86-2330(月~金:9:30~17:00)

<出演者>
齊藤栄一
中込健太
小松崎正吾
住吉佑太
三浦康暉
池永レオ遼太郎
北林玲央
前田順康
三枝晴太
小野田太陽
詫間俊
新山萌
野仲純平

<STAFF>
演出:阿部好江
主催:北前船/明治座
共催:鼓童文化財団
制作協力:インタースペース
後援:台東区/台東区芸術文化財団
協力:(一社)浅草観光連盟/浅草商店連合会/浅草料理飲食業組合/浅草のれん会/浅草うまいもの会/浅草槐の會/東京浅草連合/
仲見世商店街振興組合/浅草雷門通り商店街振興組合/伝法院通り江戸まちづくり協議会/オレンジ通り商店街振興組合/
浅草新仲見世商店街振興組合/浅草花屋敷通り商店街(順不同)

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