世界のエンターテイメントの“今”をお届け!

第34回東京国際映画祭 クロージングセレモニー開催

撮影:伊藤彰紀(aosora)

1985年、日本ではじめての大規模な映画の祭典として誕生し、今年で第34回を迎える
東京国際映画祭(以下,TIFF)は日本で唯一の国際映画製作者連盟(※)公認の国際映画祭です。
日本およびアジアの映画産業、文化振興に大きな足跡を残し、アジア最大級の
国際映画祭へと成長しました。いまや最も熱気溢れるアジア映画の最大の拠点である東京に
世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンが新たな才能とその感動に出会い、
交流する場を提供しています。17年ぶりに新天地である日比谷・有楽町・銀座エリアに
メイン会場を移して行われた今年のTIFF。10日間に及んだ映画の祭典の最後を締めくくる
クロージングセレモニーが2021年11月8日(月)、東京都千代田区のTOHOシネマズ日比谷スクリーン12にて行われました。

※国際映画製作者連盟:世界の映画産業、国際映画祭の諸問題を改善し、検討する国際機関。
パリに本部を置き、世界31ヵ国(2018年9月現在)が加盟している。

【クロージングセレモニー】

10月30日(土)より10日間に渡り行われた第34回TIFF。開催期間中には120本を超える作品が上映され、
それ付随する様々なイベントやトークセッション等が行われる等、最大限の盛り上がりをみせ、
今年の映画祭を彩った各部門の作品が選出されました。残念ながら受賞において来日が叶わなかった
各賞の受賞者はオンラインでの登壇となりました。

「Amazon Prime Videoテイクワン賞」

Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞受賞作品「橋の下で」

今年新設された新人監督賞となる本賞。本部門では、審査結果が僅差であった為、
当初予定がなされていなかった「Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞」が
審査員の議論の結果、急遽設定される事に。9本のエントリー作品の中、受賞したのは瑚海みどり監督作品「橋の下で」。

©2021 TIFF

受賞した瑚海監督は「当初予定されていなかった特別な賞という事でとても嬉しく思っています。
この作品は「映画美学校」という所に私は一年間通いまして、その時の修了の課題として
作った作品なんですね。なので同期の監督を志望する仲間達と一緒に作ったので
彼等にも凄く感謝をしています。」とコメントしました。

Amazon Prime Videoテイクワン賞「日曜日、凪」

そしてAmazon Prime Videoテイクワン賞を受賞したのは、金允洙(キム・ユンス)監督作品「日曜日、凪」。

©2021 TIFF

受賞をした金監督のコメントとして「2001年だったと思うんですけど、在日コリアンを主人公にした
「GO」という映画があって、当時僕はその映画の登場人物と同じ様な学校に通っていて、
ぼんやりと映画を作ってみたいなと思い始めたのが高校1年だったんですけど、
当時、その映画を渋谷の映画館で観ました。その映画を作られた行定勲監督が審査委員長を務められた
この賞を僕が受賞する事になるとは、当時の僕は一ミリも想像をしていなかったと思います。
それが現実になったのは多分、シンプルに僕が映画を作ったからだと思います。
自分の想像の地平線を広げていけるような映画をこれからも作って行きたいと思いました。
次は長編映画でTIFFに戻ってくると思います。宜しくお願いします。」と話しました。

「「アジアの未来部門」作品賞」

アジアの未来作品賞受賞作品「世界、北半球」

10本がエントリーした中、作品賞を受賞したのは、ホセイン・テヘラニ監督作品の「世界、北半球」
テヘラニ監督からはビデオメッセージが場内スクリーンに流れます。

©2021 TIFF

テヘラニ監督「私の作品がアジアの未来作品賞を受賞した事をとても嬉しく思い、感謝しています。
とりわけ、黒澤・大島・溝口・小林・小津監督の母国である日本からこの賞を頂ける事は特別でとても感動しています。
イラン人が外国人に笑顔を見せるのは、その人が好きで親近感を持っている時です。
特に日本人に会うと必ず笑顔になるので私も笑顔で挨拶をおくります。ありがとうございます。」とのメッセージでした。

【コンペティション部門】

「観客賞」

コンペティション部門観客賞受賞作品「ちょっと思い出しただけ」©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

15作品が名を連ねるメイン部門のコンペティション部門において観客賞を受賞したのは
松居大悟監督作品の「ちょっと思い出しただけ」。松居監督から受賞の感想が述べられます。

松居大悟監督(右)©2021 TIFF

「TIFFは4回目の参加で、初めて両手に重さを感じているのが嬉しいなと思います。
「ちょっと思い出しただけ」という作品は、この2年位の世界中の苦しい時間、悔しい時間というものが
ただ悲しい事だったり嫌な事だったりという事ではなくって、人と会える瞬間の嬉しさとか
鮮やかさとかが愛しく思える様に、過去と今を等しく抱きしめられる様に前に進んで欲しいと
思って作りましたので、凄く嬉しいです。そしてこの映画の音楽を作ってくれた尾崎君の
主題歌によって生まれた物語なんですけど、明日が尾崎君の誕生日なんですよ。
なので、この映画が僕の誕生日に初上映されて、明日誕生日プレゼントとして伝えられるなと思って凄く嬉しいです。」

「最優秀芸術貢献賞」

最優秀芸術貢献賞受賞作品「クレーン・ランタン」© 2021 Ucqar Film. All rights reserved.

受賞作品はヒラル・バイダロフ監督作品の「クレーン・ランタン」。バイダロフ監督からのビデオメッセージが流れます。

©2021 TIFF

「つい先程、私の映画が最優秀芸術貢献賞を受賞したとのメールを受け取りました。
私が初めて撮った母に見せた時、こう言われました。「ストーリーも演技もない 映像と音があるだけ
ただ魂がある。特別な魂が籠っている」と。10年経っても言われる事は変わりません。
私の作品を観た人は大抵、同じ事を言います。しかし、それは映画にとって大切な事だと思っています。
1000本の映画を観る事は簡単ですが、魂を持つ3人の監督を見つける事は困難です。
長くなってしまいました。審査員の皆様に感謝いたします。」

「最優秀男優賞」

最優秀男優賞受賞作品「四つの壁」©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED

受賞者はバフマン・ゴバディ監督作品の「四つの壁」に出演したアミル・アガエイ、ファティヒ・アル
バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥの4名。
4人を代表しアミル・アガエイさんからのビデオメッセージが流れます。

©2021 TIFF

アミルさん「私を選んで下さった審査員の方々にお礼を申し上げたいと思います。イラン人である私を仲間に入れてくれた
「四つの壁」の俳優チーム、フンダ・ファティヒ・バルシュ・オヌルに感謝します。
トルコ語を勉強していた頃には、まさかこんなに貴重に使える日が来るとは思いませんでした。」

「最優秀女優賞」

最優秀女優賞受賞作品「もうひとりのトム」© Buenaventura Producciones S.A. de C.V.

受賞したのはロドリゴ・プラ、ラウラ・サントゥージョ監督作品の「もうひとりのトム」に出演したフリア・チャべスさん。

©2021 TIFF

フリアさん「この映画を実現させてくれた全ての人に感謝します。皆が一丸となって自分の役割を果たしやり遂げたのです。
そして私に慈悲を与えてくれた主君クリシュナにも感謝します。賞を受賞した事が本当に信じられません。
又素晴らしい俳優のイスラエルにも感謝したいと思います。彼はこの若さで才能を発揮しています。
彼の両親もクールで、その影響がこのような壮大な役を演じられる事になったのだと思います。」
東京国際映画祭にも感謝したいと思います。賞を頂き、ありがとうございました。」

「最優秀監督賞」

最優秀監督賞受賞作品「ある詩人」©Kazakhfilm

受賞をしたのは「ある詩人」を監督したダルジャン・オミルバエフ氏。

©2021 TIFF

「審査員や観客の皆様の中で本作を理解された方々がいらして、このような高名な賞で評価をしてくださった事を
大変嬉しく思います。勿論、芸術作品の最終的な評価とは、時を経て得られる物ですが、
私達は映画を作り、このような場で発表していかなければなりません。
ですから今回の受賞は素晴らしい事であり、私のみならず、撮影チームやカザフフィルム・スタジオにとっての
栄誉でもあります。そして、このような賞は今後の私達の仕事にも力を与えてくれるものです。」と、ダルジャン監督のコメントです。

「審査員特別賞」

審査員特別賞受賞作品[市民」© 2021 Menuetto/ One For The Road/ Les Films du Fleuve/ Mobra Films

テオドラ・アナ・ミハイ監督作品の「市民」が受賞。

©2021 TIFF

「市民」は7年かけて手掛けた作品で、私にとって非常に思い入れのある映画です。
この作品のテーマは非常にデリケートで現在のメキシコにとってはタイムリーな問題です。
海外の皆さんに見てもらい、メキシコの問題を知って議論いただく事が大切な事だと思っております。
名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。」

「東京グランプリ/東京都知事賞」

東京グランプリ/東京都知事賞受賞作品「ヴェラは海の夢を見る」© Copyright 2020 PUNTORIA KREATIVE ISSTRA | ISSTRA CREATIVE FACTORY

©2021 TIFF

そして栄えある東京グランプリ/東京都知事賞を受賞したのは、カルトリナ・クラスニチ監督作品の
「ヴェラは海の夢を見る」。今年のコンペティション部門国際審査委員長である
フランス人俳優のイザベル・ユペール氏から受賞の総評が話されます。

©2021 TIFF

イザベル「この映画は、夫を亡くした女性を繊細に描くと共に、男性が作った根深い、
ルールに従わない者を絡め取る拡張制度の構造に迫る映画でもあります。
監督は国の歴史の重荷を抱えるヴェラの物語を巧みに舵取りしています。
その歴史の重みは静かに、しかし狡猾にも社会を変えようとする者に暴力の脅威を与えるのです。
確固とした演出と力強い演技と撮影が自信に満ちた深い形での個々や集合的な衝突を
映画の中で生み出しています。この映画はコソボの勇気ある新世代の女性監督等による
素晴らしい作品群にまた一作が加わったと言えます。」とグランプリを称えました。

各部門の受賞作品の発表後、舞台上にコンペティション部門国際審査委員の5名が登壇し、
審査委員長のイザベル氏がコンペティション部門の総評を話します。
「私達が拝見した15作品を振り返ってみますと、私にもっとも強い印象を残した事の一つは
映画の多様性の豊かさです。先ず言語の多様性、コンペティション部門出品作品の中には
言語の違いがテーマになっているものがありました。最優秀監督作品の「ある詩人」は、
登場人物の一人が、世界に数多く存在する言語の事を論じ、多くの言語が消滅の危機に晒されていると嘆くシーンが有ります。
また、逆の意見も表明されています。皮肉な事ですが「ちょっと思い出しただけ」では、
世界の人が皆、同じ言葉を話したら良いんじゃないか?と考えたりしています。

©2021 TIFF

驚くべき事に詩もコンペティション作品部門の大きなテーマになっていました。
その他、非言語的な芸術法や形式であったり、あるいは音楽、演劇、舞踊、そして映画そのものと言った
表現形式も取り上げています。コンペティションの選考で我々審査委員は現代文化における映画の位置付けについて
考える事を求められました。そして既に確立されたアーティストと新しい方達の声、世界の様々な国々の
多様なコミュニティを扱っている作品に向かい合う事になりました。
そして何度も何度も作品が齎す社会のイメージの現代的な事に感動いたしました。
以前は世界の映画の中では文化を民族的なフォークロアとして捉える見方がありましたが、
今年の東京ではそのような事はありませんでした。

ここで3作だけ上げますと、「ヴェラは海の夢を見る」「市民」「もうひとりのトム」。これらの作品の主役達は
3人共、苦境や腐敗、犯罪や暴力に直面しています。3作のどの映画でも社会制度全体のこれらの問題と、
人々を引き続き抑圧し続ける過去のレガシーを見せています。それでありながら、
非常に特徴的なのが、3作の主人公は共に被害者としては描かれていません。
その一人一人が敵を見極め、対峙していく事が出来る様になっています。
そして最後には戦いの勝ち負けに関わらず、これらの作品は未来に目を向けています。
こうした15の作品と共に世界を探求するという事は楽しい事で、
審査委員としてお仕事を任された事を大変光栄に思っております。」

クロージング作品『ディア・エヴァン・ハウゼン』© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

©2021 TIFF

最後に安藤裕康第TIFFチェアマンによる閉会宣言とクロージング作品である『ディア・エヴァン・ハウゼン』の
上映をもって34回目の東京国際映画祭はその幕を閉じました。

【第34回東京国際映画祭クロージングセレモニー概要】

<日時>
2021年11月8日(月)

<会場>
TOHOシネマズ日比谷 スクリーン12

<報道媒体数>
スチールカメラ:39人
ムービーカメラ:8人
ペン記者:24人

<登壇者>
イザベル・ユペール:俳優・コンペティション部門国際審査委員長
青山真治:映画監督/脚本家・コンペティション部門国際審査委員
クリス・フジワラ:映画評論家/プログラマー・コンペティション部門国際審査委員
世武裕子:映画音楽作曲家・コンペティション部門国際審査委員
ローナ・ティー:プロデューサー/キュレーター・コンペティション部門国際審査委員
松居大悟:映画監督/コンペティション部門作品賞&スペシャルメンション『ちょっと思い出しただけ』受賞者
瑚海みどり:映画監督/Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞『橋の下で』受賞者
金允洙(キム・ユンス):映画監督/Amazon Prime Videoテイクワン賞『日曜日、凪』受賞者
韓燕麗:東京大学大学院総合文化研究科教授/アジアの未来部門審査委員
北条誠人:ユーロスペース支配人/アジアの未来部門審査委員
石井裕也:映画監督/アジアの未来部門審査委員
行定勲:映画監督/Amazon Prime Video テイクワン賞審査委員
渡辺真起子:俳優/Amazon Prime Video テイクワン賞審査委員
アンドリアナ・ツヴェトコビッチ:元駐日マケドニア大使/映画監督/Amazon Prime Video テイクワン賞審査委員
アルバ-・メフメティ:駐日コソボ共和国大使館臨時代理大使
潮田勉:東京都副知事
安藤裕康:第34回東京国際映画祭チェアマン

MC:中井美穂(フリーアナウンサー)

【第34回東京国際映画祭開催概要】

公式サイトはこちら

<開催期間>
2021年10月30日(土)〜11月8日(月)

<会場>
シネスイッチ銀座(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、
有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、東京国際フォーラム、
TOHOシネマズ日比谷(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用

<上映本数>
126本

『STAFF』
主催:公益財団法人ユニジャパン(第33回東京国際映画祭実行委員会)
共催:経済産業省/国際交流基金アジアセンター(アジア映画交流事業)/東京都(コンペティション部門、ユース部門)
後援:総務省/外務省/観光庁/中央区/独立行政法人日本貿易振興機構/国立映画アーカイブ/
一般社団法人日本経済団体連合会/東京商工会議所/一般社団法人日本映画製作者連盟/
一般社団法人映画産業団体連合会/一般社団法人外国映画輸入配給協会/
モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)/全国興行生活衛生同業組合連合会/
東京都興行生活衛生同業組合/特定非営利活動法人映像産業振興機構/一般社団法人日本映像ソフト協会/
公益財団法人角川文化振興財団/一般財団法人デジタルコンテンツ協会/一般社団法人デジタルメディア協会
支援:文化庁
オフィシャルパートナー:日本コカ・コーラ株式会社/Amazon Prime Video
プレミアムスポンサー:三井不動産株式会社/タカラベルモント株式会社
スポンサー:大和証券グループ/株式会社アイム・ユニバース/株式会社バンダイナムコホールディングス/ハイアット リージェンシー 東京ベイ
コーポレートパートナー:松竹株式会社/東宝株式会社/東映株式会社/株式会社KADOKAWA/日活株式会社/
一般社団法人映画演劇文化協会/一般社団法人日比谷エリアマネジメント/東京ミッドタウンマネジメント株式会社
メディカルサポーター:ICheck株式会社
メディアパートナー:株式会社J-WAVE/株式会社WOWOW/日本映画専門チャンネル/ウォール・ストリート・ジャーナル/
LINE株式会社/株式会社つみき/株式会社ムービーウォーカー/ぴあ株式会社/株式会社 ニッポン放送/Variety
フェスティバルサポーター:株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス/西尾レントオール株式会社/
株式会社トムス・エンタテインメント/人気酒造株式会社/株式会社クララオンライン/株式会社レントシーバー/
ゲッティ イメージズ ジャパン株式会社

©2021 TIFF

 - News, life