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森山未來『「見えない/見える」ことについての考察』合同取材会開催

(c)Shintaro SUMIMOTO

株式会社サンライズプロモーション東京は、森山未來によるリーディングパフォーマンス
『「見えない/見える」ことについての考察』を開催します。2017年に東京藝術大学にて初演され、
新しい表現のかたちを示したとして、全4公演ながらも話題を呼んだ本作品。

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森山未來のソロパフォーマンスとしては、初の全国ツアーとなり、<日常を失った世界に問う「本当に見ること」とは >
という問いかけとともに全国7カ所、38公演を実施。俳優やダンサーとして第一線で活躍しながら、
国境やジャンルを超えた表現に挑戦し続ける森山未來の織りなす、声と身体、光で感じる新感覚の朗読パフォーマンスです。

10月からの公演開始に先駆け、2020年9月16日(水)東京都内某所にて本作品の合同取材会が行われました。

【合同取材会の様子】

合同取材会に登壇したのは、演出・振付・出演を務める森山未來さん。

冒頭、森山さんより挨拶が。
森山さん「こういう状況下なんですけども、地方7か所のツアーをさせて頂くという事で、
色んなリスクがある事も承知で、勿論、最善の対策はちゃんとさせて頂きつつ、
舞台芸術という物が中々厳しい立ち位置に立っていると思うんですけど、舞台だけにかかわらず、
表現をしたい、その表現に触れたい、観たいという欲求みたいなものはやっぱり変わらないんじゃないかなと
ここ数か月で感じて来た事でもあるので、それを信じて、安全面や健康面で気をつけつつ、
無事にツアーを成功させたいなという気持ちでいます。」

続いて質疑応答へ。

【質疑応答】

Q:本作は2017年の再演となるが、創作のきっかけは?

東京都現代美術館のキュレーターで東京藝術大学の教授でもある長谷川祐子さんからお声掛けを頂いて、
朗読をしてみないか?という話が有ったんですね。で、東京藝大の中に球体ホールという場所があって、
そこがとても特殊な空間で、半球状の舞台空間があって、そこで朗読内容等を話し合っていた時に、
出て来た本がポルトガルの作家、ジョゼ・サラマーゴの『白の闇』、そしてフランスの作家・哲学者、
モーリス・ブランショの『白日の狂気』。この二つは白の闇に関しては、正しくパンデミックというか、
ある地域の全員が盲目になってしまったというもので、そこから新しい社会を作っていくのか、
どういう風に人々が関わって生きていくのか、というフィクション作品なんですけど、
『白日の狂気』というのは、何か散文詩的な考え方をする抽象的な部分が強い本なんですけど、
その中で僕が受け取った印象としては、日々生きていく中で自分が見ているもの、
そして自分が見えていないもの、「内面的な盲目性」という物を凄く考察しているという印象を受けて、
いわゆる、物理的な話として「盲目になる」というのと、内面的に盲目であるのではないか?という
2つの話を交錯させたら面白いんじゃないかなと思い、藝大の球体ホールに、言ってしまえば「眼」の中に
居るような印象を僕は受けたので、そんな作品を作ってみたらどうかな?という所から立ち上がってきました。」

Q:初のソロツアーとして全国公演となるが、2017年の初演からの気持ちの変化は?

森山さん「初演が前述の球体ホールで2017年にやらせて頂いて、去年はUAE(アラブ首長国連邦)のシャルジャで
やらせてもらったので、作品がこうして継続して出来るという事は本当に有難い事ですし、素晴らしい事だなと思います。
2017年の時に、2020年がこんな状況になるとは全く想像もしていなかったですけど、世界中で僕等が置かれている状況、
これからどういう風に生きていくのか、というある種の価値観が変動していった事は間違いないので、
手探りではあるんですけども今、この状況においてこの作品をやる意味というのが皮肉にも凄く強く出てしまったんじゃ
ないかなという印象はありますね。」

Q:コロナ禍ではクリエイターとしてどの様な気持ちで創作活動をしていたのか?また、日常はどう過ごしていたか?

森山さん「リモートでのワークであったり、「ZOOM」を使ったパフォーマンスを含め、5,6本の
パフォーマンスをやりましたね。先程の通り、こういう状況で外にも出れない、勿論、劇場も使えない、
そんな中でクリエイションを出力する事が成立するのか?という実験のような事はずっと自分の中で
考えていたし、色んなことを経てやはり表現したい欲求とか、興行的に成功させるさせないというのは、
中々難しい所はまだまだあるだろうなとは思いつつ、享受したい欲求というのは、それは
オンライン上でもあるんだなと間違いなく感じていたので、その強度みたいなもの凄く痛感しました。
それまでは劇場へ赴いて観客やスタッフと会って作品というものを完結させるといのが当然の様に
あった事が出来なくなったっていう所から、?人と人が出会う事、その場所へと赴く事という思いや、
方法、それをどういう風に構築するのか?という興味をいまも持ちながらやっていたりします。

(自粛期間の)前半は本当に外にも出れない中で、淡々と生活をしていましたけど、リモートが始まってから
家にいるのに仕事をしている…みたいな。もともと僕はそういう仕事の仕方をしないので、もどかしい日々を
すごしていたんかもしれないですね。」

Q:昨年の舞台公演で骨伝導スピーカーを用いる等、身体の感覚に注目している理由、またはキッカケがあるのか?

森山さん「……何なんでしょうねぇ?その手段は後付的に出てくるというか。あの時は一緒に共同していた
アーティストが骨伝導の事を研究していて、そこから「じゃぁ、どういう風に使ったら面白いだろうか?」
という所から始まっていたりだとか。今回も朗読する本が「見る/見えない」という所に関する本で、
公演場所が球体ホールという特殊な場所だったからこそのコンセプトが生まれたという部分でもあるんですけど、
それは僕が演劇に言語という物を用いてコミュニケーションを取ったり、作品を作る事だけでは無く、
身体を使ってどういうパフォーマンスが出来るのかという事を考えているから、必然的にそうなるのかなと
おもうんですけど、言語だけで情報をやりとりするという作品作りだけでは無く、身体を用いる事によって
視覚によって情報を得るのか、もしくは聴覚・嗅覚によって情報を得るのかという、どこかしらの感覚を
もう一つのコミュニケーションツールとして用いると、言葉を超えたパフォーマンスというものが
できるんじゃないかという思いが何処かにあるから、聴くことや見る事にフォーカスしたような
物作りになるのかもしれないです、」

Q:あの人間離れしたパフォーマンスの最中は何を考えているのか?それとも能動的に動いてるものなのか?

森山さん「例えば、作品のコンセプトが生まれて、どのように作っていこうかと色んな物が決まっていった中で、
僕は作品のコンセプトと世界観を媒介する存在になるなとはいつも思うので。ダンスパフォーマンスとか、
言葉を多用しない演技は得てして抽象的なものだと言われてしまう所はあるんですけど、それでも作品を
受け止める媒介者として、どういうストーリーテーリングが出来るか?というのは、自分なりにいつも
考えています。でもそれは、パフォーマンスをやっている時に考えながらやっているかは分からないですけど、
そういう考えを持ちながらクリエイションを続けていって。
パフォーマンスをする時は、初めて観客の前に出る時なので、お客さんと自分の位置を自分なりに捉えながら
コミュニケーションをしている感覚はありますよね。で、その時に初めて作品として完結するという
イメージもあるので。今だからこそ余計に強く思うんですけど、そういう時間が新鮮な物なんだろうなと思います。」

Q:本作の制作過程を話せる範囲で教えてほしい。

森山さん「最初は東京藝大からのお話だったという事もあって、「美術館」みたいな感覚で作品が作れないかな?と
思っていたんですね。だから空間自体はずっとオープンにしていて、テキストの朗読、そこからインスパイアされた体を
ずっと5,6時間廻している、そんな空間になれば良いなと最初は思っていたりしたんですけど。
作品の概要的には、朗読を含めた30~35分間のパフォーマンスを先ずやって、休憩を挟んでもう一度30~35分
パフォーマンスを観て貰うという形式になっているんですけど……マダ、イワントコ。
『白の闇』に関しては、お話としてとても完結しているフィクションなので、そっちはストーリーラインとして、
腹落ちしやすい表現となっています。それに対して、『白日の狂気』はとても詩的な表現なので、
僕は本を読んでいて前述の印象を持ちつつも、『白日の狂気』は行間がとても多いんですよね。
その隙間をどの様に埋めていくか?となった時に身体的な表現になっていったりとかはしていました。」

Q:コロナ禍という事もあり、初演との演出変更点はあるのか?朗読とパフォーマンスの比率は?

森山さん「今日の取材会と同じ様にディスタンスをとったり、ガイドラインに沿った形での
パフォーマンスになるので、それに伴った変更というのは勿論出てくると思いますね。
現在、それはスタッフを含めて皆でテスト中なんですけど、それを踏まえてこのコンセプトを
明確に強く伝わる方法は無いのだろうか?と演出的な所は今、揉んでいる所ですね。

踊りを見るのが苦手という方でもちゃんとお話が聞ける分量のテキストは用意させて頂いております。
ジョセ・サラマーゴはノーベル文学賞を獲っている名著者なので、その本に触れる事で
単純に本としての面白さを朗読パフォーマンスによって体感してもらうという事はありますし、
そこからもう一つ、僕として付随させたい身体的なものだったりとか、空間的な演出というものを
組み込んでいくという感じですね。割合としては、テキスト7割・パフォーマンス3割ですかね。」

Q:自身が関わる公演が行われた時、何が一番、自身の心を打つモノなのか?

森山さん「難しいですね・・・・・・。例えば今回はリーディングパフォーマンスという事になるんですけど、
この作品を全部自分一人で作り上げたかというと、全くそんな気はしていなくて、
やはり一緒に協業しているスタッフや彼等と共に作り上げて来たというイメージがあるので、
それは人数が増えようが減ろうが変わらないという感覚なんですよね。
勿論、0から100まで一人で作り上げるアーティストの方もいるし、そういう人達に対する
リスペクトは有るんですけど、舞台芸術の世界において、そういう風に作れるという事は
多分、無いというか、むしろそこに僕は美しさを感じるというか。なので、
プロセスもそうですし、所謂観客といわれる人達の前でやる瞬間もそうだし、
それは人との係わり合いというか、その中で生まれていく芸術だと思っているので、
ただ、どのタイミングで「出来た!」と思う物なのかというのは中々難しいんですけど、
観客の人達も含めて一緒に関わっている人が本当に楽しいと単純に思えるというのでも良いし、
それを観た事によって、劇場から外に出た時に見える風景が少し変わって見えるような
体験になれば良いなと何時も思っています。」

最後にファンへのメッセージを。

森山さん「舞台芸術は今、興行的な意味では中々やりづらい位置にはあるんですけども、やはり、映像作品とは違って、
実際にその場所で出会った人達で作品や世界を共有するという事の強さが舞台芸術にはあるので、
それをやるしかないというか、それをやらない事には、例えばそれを映像に変換をしても、
生の触れ合い、その場所でしか体感出来ないものは確かに存在するというのは、前々から思っていた事ですし、
今現在、より強く感じている事なので、生で出会えさえすれば、それだけでもう大丈夫なんじゃないか…位の、
事を思っていたりするので、一緒に時間を体験できればなと非常に楽しみにしています。」

【「見えない/見える」ことについての考察公演概要】

公式サイトはこちら

<公演期間>
神奈川公演:2020年10月14日(水)~10月17日(日)
長野公演:2020年10月21日(水)・22日(木)
愛知公演:2020年10月23日(金)~10月25日(日)
兵庫公演:2020年10月27日(火)~10月29日(木)
大阪公演:2020年10月30日(金)~2020年11月1日(日)
福岡公演:2020年11月3日(火)
長崎公演:2020年11月5日(木)・6日(金)

<会場>
神奈川:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
長野:サントミューゼ上田 大スタジオ
愛知:愛知県芸術劇場 小ホール
兵庫:あましんアルカイックホール・オクト
大阪:フェニーチェ堺 大スタジオ
福岡:スカラエスパシオ
長崎:長崎市チトセピアホール

<公演時間>
約1時間35分(15分間の途中休憩を含む)

<料金>
神奈川:
平日:6,500円 土日:7,000円

長野・兵庫・福岡・長崎:
平日・祝日:5,500円

愛知・大阪:
平日:6,000円 土日:6,500円
※開場は開演30分前
※未就学児入場不可
※全席自由:開場時間より本券に記載の整理番号順にご入場頂きます。
※車椅子のお客様は、ご購入後「お問合せ」へ事前にご連絡ください。

<出演者>
森山未來

<STAFF>
演出・振付・出演:森山未來
キュレーション:長谷川祐子
テキスト:ジョゼ・サラマーゴ「白の闇」(翻訳:雨沢泰、河出書房新社刊)、モーリス・ブランショ「白日の狂気」(翻訳:田中淳一 ほか、朝日出版社刊)
共同振付:大宮大奨
照明:藤本隆行(Kinsei R&D)
音響:中原楽(ルフトツーク)
映像:粟津一郎
舞台監督:尾崎聡
協力:藤井さゆり、三宅敦大
制作協力:伊藤事務所
神奈川公演共催:横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
愛知公演共催:愛知県芸術劇場
大阪公演共催:フェニーチェ堺
企画・制作・主催:サンライズプロモーション東京

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