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「改竄・熱海殺人事件」絶賛公演中!

1973年に文学座に書き下ろされ、発表された「熱海殺人事件」はつかこうへいの代表作。
最年少で岸田戯曲賞を受賞、紀伊國屋ホールを拠点につかこうへい事務所の春の名物として何度も再演を重ね東京の春の風物詩とも呼ばれる程になりました。
紀伊國屋ホールでの「熱海殺人事件」だけは、つかこうへい自身の手によって上演され「ザ・ロンゲストスプリング」「モンテカルロ・イリュージョン」などと変化しつかこうへい亡き後も、岡村俊一氏の手によってその遺志が脈々と受け継がれてきました。
そして、47年目となる2020年。令和初の「熱海殺人事件」が、幕を開けます。

2020年3月12日(木)に開幕した「モンテカルロ・イリュージョン」に続き、2020年3月17日(火)開幕の「ザ・ロンゲストスプリング」のオフィシャルレポートが到着しましたのでお伝えします。

【「改竄・熱海殺人事件」ザ・ロンゲストスプリング】

幕が上がると舞台上には大量のスモーク。そしてロックアレンジの『白鳥の湖』が爆音で流れる中、電話でなにかをしゃべっている木村伝兵衛部⾧刑事(荒井敦史)だ。

そこに現れたのは富山県警きっての切れ者、熊田留吉刑事(佐伯大地)。警視庁捜査一課に転任してきた彼は、木村から自分が富山に捨ててきた女・幸江のことを持ち出されて面食らう。

さらに木村は、自分の女である水野朋子婦人警官(馬場ふみか)が、今日を最後に彼女が別の男のもとへと嫁いでいくと言い、他人に一歩踏み込むことのできない人間たちが、その一歩を踏み込んで殺人を犯した容疑者大山金太郎(玉城裕規)を捜査すると宣言。

捜査を始めようとする熊田だが、木村は熊田を挑発しては肩透かしを食わせて翻弄。
それに加担する水野。痴話喧嘩を始めた挙げ句に木村は「私たち二人の永すぎた春に風穴を開けるためにこの熱海殺人事件はあるのです」と言い、大山の捜査には、熊田の卑しい生まれとゲスな育ちが必要なのだと言い放つ。あまりの言葉にこらえきれず、激昂する熊田。

そこに容疑者大山金太郎が登場。だが、サングラスを取ると間抜け面になってしまい、木村が望むような、強面の容疑者として振る舞うことができない。肝心の捜査のほうも熊田と幸江、そして木村と水野の恋愛に脱線していく。大山は「俺の捜査をしてくれ!」と言いながら木村、水野、そして熊田の個人的な事情へ踏み込んでいくことになる。だが、それもまた木村による捜査の一環だったのだ……。

歴代の『熱海殺人事件』の中でも、木村が内包する狂気を強調したことで知られている『ザ・ロンゲストスプリング』。この作品を演出するにあたって中屋敷法仁は、木村と水野、熊田と幸江、大山とアイ子という三組の男女に着目。『ザ・ロンゲストスプリング』以外のバージョンからもエピソードを導入し、三つの愛の背景とディテールを掘り下げて、より物語が加速していくような“改竄”を施した。

それに加えて、極端なまでにボリュームに大小をつけた音楽や、役者同士が台詞だけで格闘するかのような熱いやりとりには、次第に相手に踏み込んでいくようになる人間たちが描かれ、観るものを圧倒する。シンプルなぶつかりあいは、演じる役者に確たる存在感を求めるが、木村を演じる荒井は、つか作品特有の台詞回しを、きっちり自分の身体に落とし込んで実践。

トリッキーな役どころを軽くなることなく演じ、作品を貫く木村の意志=つかの思想を支えきってみせた。
水野役の馬場はトリッキーな木村像に息を合わせて、不条理なパワーに満ちたコミカルなシーンを表現。
さらに水野が木村に抱く複雑な恋心や、世俗に染まってしまったアイ子の哀しみを表現し、作品世界に奥行きをもたらしている。

今回の演出では熊田の出自や過去がより強調されているが、佐伯は、ニュートラルな市民感覚を持つ熊田が、次第に感情を吐き出さずにはいられなくなる様子を、抑制の利いた演技で見せる。
だからこそ、最後に自分の思いを吐露する姿には清々しさが漂う。

大山役の玉城は、容疑者と呼ぶには頼りないやさしい男大山を、オフビートな声としなやかな身体を武器に表現。誰にでも親身になって踏み込める人間が、なぜアイ子を殺したのか。
善人が犯してしまった罪の哀しさとその背景を、型にはまることなく演じている。
本作では台詞に観客を意識して放つ言葉があるなど、役者が放つ熱量をダイレクトに客席に放射してつながろうとする部分が感じられる演出が目立つが、4人の役者は自身を作品を構成する素材として位置づけて、中屋敷が目指す表現に貢献している。

中屋敷は二つの『熱海殺人事件』を演出するにあたって、「演劇は人との出会いから生まれる」と語っているが、生で観客と向きあい、役者が備えているパワーを最大限に引き出し、ソリッドに提示するという演出は、『モンテカルロ・イリュージョン』とはまた異なる角度から、演劇が持つ力を改めて感じさせてくれる。

ライブだから伝えられる、役者という存在が放つ衝撃と説得力。それを信じてカンパニーはこの公演を続けている。

 

【つかこうへい演劇祭―没後10年に祈る―「改竄・熱海殺人事件」公演概要】

公式サイトはこちら

<公演期間>
東京公演:2020年3月12日(木)~3月30日(月)
大阪公演:2020年4月4日(土)・4月5日(日)※大阪公演は全日ザ・ロンゲストスプリング公演となります。
福岡公演:2020年4月11日(土)・4月12日(日)「FM福岡開局50周年・IMS SPRING 2020 特別公演」
※福岡公演は全日モンテカルロ・イリュージョン公演となります。

<会場>
東京:紀伊國屋ホール
大阪:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール 
福岡:イムズホール

<公演時間>
「ザ・ロンゲストスプリング」:約1時間50分
「モンテカルロ・イリュージョン」:約1時間50分
(共に途中休憩無し)

<料金>
東京・福岡:7,000円
大阪:7,300円
(全席指定・税込)
※未就学児童入場不可
※車イスでご来場のお客様は事前にお問い合わせまでご連絡ください。

<出演者>
『ザ・ロンゲストスプリング』
木村伝兵衛部長刑事:荒井敦史
水野朋子婦人警官:馬場ふみか
熊田留吉刑事:佐伯大地
容疑者大山金太郎:玉城裕規

『モンテカルロ・イリュージョン』
木村伝兵衛部長刑事:多和田任益
水野朋子婦人警官:兒玉遥
速水健作刑事:菊池修司
容疑者大山金太郎:鳥越裕貴

<STAFF>
作:つかこうへい
演出:中屋敷法仁
音響:山本能久
照明:松本大介
衣裳:西本朋子
演出助手:入倉麻美
舞台監督:川除 学
宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:神ノ川智早
宣伝衣裳:西本朋子
宣伝ヘアメイク:門永あかね
宣伝:ファイズマンクリエイティブ
WEB製作:メテオデザイン
東京公演主催:ミックスゾーン/ぴあ
大阪公演主催:サンライズプロモーション大阪
福岡公演主催:エフエム福岡/イムズ/ピクニック
東京公演提携:紀伊國屋書店制作:ゴーチ・ブラザーズ
制作協力:つかこうへい事務所/アール・ユー・ピー

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