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舞台『組曲虐殺』開幕!

2019年は、2010年4月に没した井上ひさしの没後10年目のメモリアルイヤー。
こまつ座では「井上ひさしメモリアル10(テン)」として、幻の初期作から最後の書き下ろし戯曲『組曲虐殺』まで、綺羅星のような作品を上演します。
こまつ座&ホリプロ公演『組曲虐殺』は、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の生涯を、彼を取り巻く愛すべき登場人物たちとの日々を中心に描いた作品です。一人の内気な青年が、なぜ29歳4ヶ月で死に至らなくてはならなかったのか。
明るさと笑いと涙に包まれつつ、現代社会を鋭く照射する音楽劇が2019年10月6日(日)、東京都品川区の天王洲 銀河劇場にて開幕しました。

【ストーリー】

提供:ホリプロ

ときは昭和5年の5月下旬から、昭和8年2月下旬までの、2年9ヶ月。

提供:ホリプロ

幼い頃から、貧しい人々が苦しむ姿を見てきた小林多喜二は、言葉の力で社会を変えようと発起し、プロレタリア文学の旗手となる。だが、そんな多喜二は特高警察に目をつけられ、「蟹工船」をはじめ彼の作品はひどい検閲を受けるだけでなく、治安維持法違反で逮捕されるなど、追い詰められていく。そんな多喜二を心配し、姉の佐藤チマや恋人の田口瀧子はことあるごとに、時には変装をしてまで、彼を訪ねていく。

提供:ホリプロ

提供:ホリプロ

提供:ホリプロ

瀧子は、活動に没頭する多喜二との関係が進展しないことがもどかしく、また彼の同志で身の回りの世話をしている伊藤ふじ子の存在に、複雑な思いを抱いている。言論統制が激化するなか、潜伏先を変えながら執筆を続ける多喜二に対し、刑事の古橋鉄雄や山本正は、彼の人柄に
共感しながらも職務を全うしようと手を尽くす。命を脅かされる状況の中でも、多喜二の信念は決して揺るがず、彼を取り巻く人たちは、明るく力強く生きていた。
そしてついにその日は訪れる…。

提供:ホリプロ

多喜二「ぼくたち人間はだれでもみんな生まれながらにパンに対する権利を持っている。けれどもぼくたちが現にパンを持っていないのは、だれかがパンをくすねていくからだ。それでは、そのくすねている連中の手口を、言葉の力ではっきりさせよう・・・・(中略)ぼくの思想に、人殺し道具の出る幕はありません。」

【出演者・スタッフコメント】

開幕にあたり、出演者・演出家、音楽・演奏者よりコメントが出されました。

演出:栗山民也「今、ゲネプロを終え、自宅に戻った。早速、ビールを開ける。ものすごい熱がまだ体全体に残っている。舞台の時間は、これだからやめられない。今回の舞台は7年ぶりの再々演だが、今までと随分と違った世界に見えた。2人の新しい俳優が参加してくれたこともあるが、皆7つ歳をとって、多喜二のあの暗黒の時代を通し、この歪んだ今の時代へと皆が正直真っ直ぐ向き合っているように思えた。勿論、井上ひさしの言葉が目の前にあってのこと、その一つひとつの言葉が、今の時代にとても強く痛く響くのだ。初演の時の台本の裏表紙に書き留めていた多喜二の言葉を、また思い出す。「革命とは、 この田口タキという人を幸せにすることだ。 」とにかくゲネプロの今夜、6人の俳優と1人のピアニストによるセッションは、一つの熱い塊になった。足し算ではなく掛け算で、舞台の温度はぐんぐんと上る。あとは観客の皆さんとのぶつかり合いで、この作品がもっと新しく大きく成長していくことを心から望む。」

音楽・演奏:小曽根真「今回は上白石さん、土屋さんという新しいファミリーメンバーを迎えての再々演になりますが、栗山さんも、僕も、役者さん全員も、新たなインスピレーションをいただいたことで、今までよりも重心が低く、もう一歩も二歩も深い所まで届いたことを感じます。きっと井上先生が描きたかった世界、観客の皆さんにお伝えしたかったメッセージをよりクリアに伝えることのできる作品に仕上がったのではないかと思います。まさしく今の時代に生きている皆さんの心に、先生が鳴らし続けた警鐘が共振するのではないでしょうか。大切なことは、これは生でしか経験できないということです。おそらく、映像で観てもこの作品の良さは100%伝わらないでしょう。皆さんも、井上先生の仰る「運命共同体」として、生でこそ得られるものを感じるため、ぜひ劇場に足をお運びください。 」

小林多喜二:井上芳雄「初演のとき僕は30歳で、多喜二と同年代でした。それからずっと僕の中には多喜二と井上ひさしさんがずっといて、2人に恥ずかしくない自分でありたいと思って生きてきた気がします。今振り返ってみると「組曲虐殺」は自分が演劇をやる意味に気づかせてくれた、大きな転機となった作品です。すべての舞台は現代社会と繋がっていて、僕たちがお芝居をする意味を明確にしなければ、未来に繋がらないことを学びました。この10年で、結婚し子供もできて自分自身の環境も大きく変化しました。井上さんや多喜二から「綱を渡された者」の1人として、未来に希望があることを信じ、今の時代に僕が演じる多喜二にしなければと決意を新たにしています。」

田口瀧子:上白石萌音「井上ひさしさんの台詞は、口に出してみて改めて言葉の強さがわかりました。今はこの作品の一部になれることが嬉しく、演じているとき、本当に幸せです。全部の瞬間と言葉が本当に尊いと感じます。私の演じる瀧子はあまり言葉を持っていない子なので、一言一言にシンプルで強い思いが込められています。それが難しい部分でもあるのですが、瀧ちゃんの信念を大切にしていきたいと思っています。自分で飾らず、台本に書かれてあることを全部そのまま受け取って、そのまま発すれば良いんだと稽古中に気付きました。全部井上先生の本に書いてあるんだなと。タイトルが怖いので身構えていらっしゃる方もいるかもしれません。 決して多幸感に満ちた時代ではないけれど、幸せになりたいと思って必死に生きていた人たちのお話です。一緒になって一喜一憂してもらえたら嬉しいです。そして言葉のもつ力と、音楽素晴らしさを存分に体感していただきたいです。 」

【舞台『組曲虐殺』公演概要】

公式サイトはこちら

<公演期間>
東京公演:2019年10月6日(日)~10月27日(日)
福岡公演:2019年10月31日(木)~11月3日(日)
大阪公演:2019年11月8日(金)~11月10日(日)
松本公演:2019年11月17日(日)
富山公演:2019年11月22日(金)
名古屋公演:2019年11月30日(土)~12月1日(日)

<会場>
東京:天王洲 銀河劇場
福岡:博多座
大阪:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
松本:まつもと市民芸術館 主ホール
富山:オーバードホール
名古屋:御園座

<公演時間>
約3時間15分(25分間の途中休憩を含む)

<料金>
東京:S席9,000円 A席7,000円 U-25(25歳以下当日引換券)6,500円
福岡:A席11,000円 B席8,000円 C席5,000円
大阪:10,000円
松本:7,500円 U18・2,000円(枚数限定)
富山:S席9,000円 A席7,000円
名古屋:A席11,000円 B席7,000円 C席4,000円
(全席指定・税込)
※未就学児童入場不可

<出演者>
小林多喜二:井上芳雄
田口瀧子:上白石萌音
伊藤ふじ子:神野三鈴
山本正:土屋佑壱
古橋鉄雄:山本龍二
佐藤チマ:高畑淳子

音楽・演奏:小曽根真

<STAFF>
作:井上ひさし
演出:栗山民也
美術:伊藤雅子
照明:服部基
音響:山本浩一
衣裳:前田文子
ヘアメイク:鎌田直樹
歌唱指導:伊藤和美
振付:田井中智子
映像:井形伸一
題字:和田誠
演出助手:坪井彰宏
舞台監督:加藤高
東京公演主催・企画制作:こまつ座/ホリプロ
福岡公演主催:博多座
大阪公演主催:梅田芸術劇場
松本公演主催:一般財団法人松本市芸術文化振興財団
富山公演主催:チューリップテレビ/イッセイプランニング
名古屋公演主催:御園座/中日新聞社
松本公演後援:松本市/松本市教育委員会

(撮影・宮川舞子)

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