世界のエンターテイメントの“今”をお届け!

Report

ポートの時代背景に合う服装を着て、パークを楽しむ

7つのポートから成り立つ東京ディズニーシー。各ポートはあたかもその世界に入り込んだような錯覚を持つほど、作りこまれております。今回は、ポートそのものに注目する楽しみ方の一つとして「ポートの時代背景に合う服装によるパーク散策」はいかがでしょうか。昔の格好になって、ポートの世界観を身をもって体験してみよう、というわけです。

写真 (1)

コンフェティにて、帆船を解説して頂いている「ぐんそうさん」が「コロンビアに乗って欧州からやってきた移民」をイメージに整え、パークに来園。その様子を簡単なストーリーと共にご覧頂きましょう。

写真2プロムナードデッキのベンチで休息。

写真 (3)テディ・ルーズヴェルトラウンジにて一杯。どうしたものか、一等客の神域にまぎれ込んだ模様。

『そんなお金あるの?』

写真 (4)ウェイターさんとのツーショット。※この後ステアリッジと発覚し追い出され・・・ませんでした。

『金なんかあるわけないだろ!』

写真 (5)貨物船セント・エルモにいざ乗り込まんとす。どうやらニューヨークには留まらないようだ。

写真6ケープコッドにたどり着く。果たして新入りの移民は先人のように定住しうるのだろうか。

ここからは「いかにも、それらしく、それっぽく」見えるポイントを少し紹介します。

・服装 ―帽子、ベスト、ネクタイ―

この時代の写真を眺めますと、紳士から職工までどんな階級でも帽子を被っていたことに気づかされます。当時は必須と言うよりも、ごく当たり前の習慣でした。ステータスシンボルともなっており、階級をわかりやすく演出しやすい小道具の一つです。わかりやすいポイントである帽子に隠れがちですが、ベストとネクタイも帽子同様に時代性が出る小物です。正確を期するならば、この場合欧州からの移民ですのでイギリス風にはベストではなくウェストコートになります。

・懐中時計

腕時計は第一次世界大戦以降に普及したものですので、この時代に時を確認する道具は懐中時計です。鎖でつながれた時計を懐から取り出し、蓋を開く仕草がいい雰囲気をかもし出すことでしょう。

 写真 (7)懐中時計を眺める

これらのように時代性を強調するポイントを抑えたアイテムを持てば演出できること間違いなしです。

例え、全身を統一せず、一つだけ持ったとしても風景に溶け込めることでしょう。

では、どのように服装をチョイスすればいいのか、まずはポートを見渡してみましょう。

 

ポートを参考にする

写真 (9)カールッチビル一階に位置する帽子屋のショーケース

ポートに点在する広告や写真は、最初に記事として解説した電気自動車の広告がベーカー社Baker Electricsのものと絵が完全に一致するように、当時の物をそのまま使っていることが多いです。そこまでいかなくてもポートの時代を演出するよう製作されていますので当時の雰囲気を感じ取る手助けになります。

写真 (10)アクアトピアのポスター

アメリカンウォーターフロント以外では例えば、ポートディスカバリーは手がかりが少ないように見えますが、エレクトリックレールウェイとホライズンベイレストランの壁画や広告、アトラクションポスターなど、手がかりはたくさんあるので、こういった作りこみから想像してみましょう。その意味において、コロンビアにはパナマ帽がしっくりきますでしょう。セオドア・ルーズヴェルトがパナマ運河を視察の際にかぶったことから有名になったのですから、パナマ運河を公室のモチーフとしているコロンビアに似合わないはずがありません。

この他の手がかりとしては、原作が頼りになります。ミステリアスアイランドは「海底2万マイル(1954)」、ロストリバーデルタはインディ・ジョーンズシリーズやそのオマージュ元である戦前の連続活劇、そしてポートディスカバリーはアルベール・ロビダAlbert Robidaの作品(「20世紀La vie électrique」など)と、明確に原作がわかるポートではこれらを活用していきましょう。

写真 (11)-2

グリーティングに出るキャラクターは東京ディズニーシーではポートの一住人ですので、大いに参考になります。アメリカンウォーターフロントのミッキー、チップとデールを見比べて見ると、いかにもハイソサエティな前者と新聞配達の後者が共に、先ほど述べたポイントである帽子とベスト、ネクタイを着用していることがおわかりになるでしょう。ただし、これらを参考にするのも良いですが、そのままですと全身仮装になってしまいますので、もっと現実的な色合いにアレンジするなど、一ひねり工夫が必要です。

写真 (12)

東京ディズニーシー開園5周年のCM、タワー・オブ・テラー(オープン時)のCM、キャストさんの衣装なども一つの世界としてのポートを垣間見ることができますので、お勧めです。

ショーとアトモスも同様に参考になりますが、アメリカンウォーターフロントの場合、時代が第一次世界大戦を挟み大きく二つに分かれている点に留意しなければなりません。

写真 (13)-2ケープコッド・ステップアウトのアイリッシュバンド

写真 (14)クリスマス・ホリデー・イン・ニューヨーク

コロンビアの処女航海を祝う「セイル・アウェイ」や初期のアトモスは戦前の1912年付近ですが、「ビッグ・バンド・ビート」や「クリスマス・ホリデー・イン・ニューヨーク」などは戦後のいわゆるジャズエイジや狂乱の20年代、Rolling Twentiesです。大戦直前は19世紀末ベルエポックのファッションと比べ、スカートはある程度短くなりコルセットもゆるくなりましたが、それでもひざまでのスカートを履き、ボブなどのショートヘアにつばが無い帽子クロッシェをかぶるフラッパースタイルと大幅に違います。つまり、どちらを選択するか、考える必要があります。正確を期するなら大戦前ですが、ジャズエイジのほうがより現代に近いので、奇異な目で見られることも少ないでしょうし、ポートの設定上どちらも問題ないので、好みの物を選ぶのが吉です。

写真 (15)セイル・アウェイ

当時を舞台にした映画やドラマも楽しみながら、風俗を知ることもできます。

 

 映画を参考にする

・「タイタニック(1997)」

1912年設定ですので、アメリカンウォーターフロントの設定にばっちりです。そもそもSSコロンビアの参考の一つ、とイマジニアが明言していますので、参考資料として必須でしょう。船そのものから小物、群集までこだわって製作されましたので、一級の資料として参考になります。

・「ラグタイム(1981)」

「タイタニック」と比べ、知名度はかなり低くサウンドトラックの” Clef Club No.2”がワールドバザールのBGMとしてかろうじて有名ですが、第一次世界大戦前のニューヨークを舞台にマディソンスクエアからユダヤ人街まで描かれていますので、アメリカンウォーターフロントをカバーするにはもってこいです。往年のハリウッドスターであるジェームス・キャグニーとドナルド・オコナーのカメオがまた見所ですが、キャグニーが演じた実在するニューヨーク市警本部長ラインランダー・ウォルドーRhinelander Waldoはアメフロに停泊する警備船R,Waldoの元ネタであることも見逃せません。

・「シャーロック・ホームズの冒険(1985~1990)」

通称「グラナダ版ホームズ」とも呼ばれるこのドラマは、最初に紹介した実例のように欧州からの移民を想定するのならばはずせません。原作はもちろん当時の世俗まで完全再現したことで知られております。

以上は第一次世界大戦前が舞台の作品になります。狂乱の20年代ならば「アーティスト(2012)」や「シカゴ(2002)」「華麗なるギャツビー(2013)」「名探偵ポワロ(1989~)」、ブロードウェイに着目するなら「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942)」などありますがここでは趣向を変えて当時の作品を紹介してみましょう。

ロイド眼鏡の由来で知られるハロルド・ロイドHarold Lloyd の作品はライバルのチャップリンやキートンと違い、都会の気弱な青年が一念発起する筋立てが多く、摩天楼の時計にぶら下がるシーンで有名な「要心無用Safety Last(1923)」や廃止の危機に陥った鉄道馬車を駆り立てマンハッタンを爆走する「スピーディSpeedy(1928)」など、頻繁にニューヨークが舞台になりました。トイストーリーマニアの外観の元ネタであるコニーアイランドもでてきます。

フラッパースタイルの参考として一人女優を選ぶとするならコリーン・ムーアColleen Mooreです。現在の知名度はクララ・ボウやルイーズ・ブルックスが上ですが、彼女は日本におけるフラッパースタイルの流行の火付け役になったと言われております。全体的に明るい作風ですので見やすい上、ショートボブと相まってまた健康的に可愛らしいんだなこれが…おっと失礼。

それでは雰囲気をつかめた所でより深く知るための書籍を紹介しましょう。

 

 書籍を参考にする

「ビジュアル博物館35服飾」ローランド・ワーン 

手軽に知るには最適の一冊です。子供向けの図鑑ですが、図を多用し、わかりやすく伝えてくれるため、まったく知らないジャンルへの導きとなります。

「20世紀のファッション」ジョン・ピーコック

女性のみですが、5年ごとに分け、外出着からアクセサリーまで詳しく紹介されています。第二次世界大戦以前だけでも相当数掲載されていいますので、思う存分活用しましょう。

特筆したいのはベアトリス・ローズ・エンディコットの元ネタと思われる絵があることです。出版年代から考えると、可能性は十分にありえますが果たしてどうなのか。

「日本のファッション明治大正昭和」城一夫  

題名どおり日本のファッションですが、取り上げられることの少ない男性のファッションや、当時の流行色までまとめられていますので資料として使えます。日本人移民が経営するレストラン櫻が、アメリカンウォーターフロントにあるのですから、このようなファッションでも構わないと思います。

 

個人的趣向によりアメリカンウォーターフロントに偏りましたが、他のポートに合わせる際もこのような要領でやってみましょう。ただし資料を参考にするのはいいですが、忠実に再現しようとすると縫い方までこだわらなければいけなくなり、際限なくなってしまいますので、雰囲気を味合うことが目的であることを忘れないようにしましょう。実例のように、一つ一つは普通に買える既製品であっても、これらの組み合わせにより「いかにも、それらしく、それっぽく」なるのですから。

注意事項

まず前提におかなければならないのは、建前としてはコスプレではなく普段着である点です。もちろん、キャラクターではないので全身仮装のルールに抵触するわけではありませんが、限度はあります。例えばアラビアンコーストにあわせようとすると、難しいものがあります。全身を統一しなくても、実例で挙げたような時代性を演出できるポイントに留めても、十分楽しめますので節度を守りましょう。

撮影する際も周囲の迷惑にならないよう気をつけなければなりません。以前明治村では貸衣装を着て歩き回ることができましたが、現在禁止である理由は、コスプレの撮影のため建物を長時間占有するなどのマナーの悪化が原因です。気をつけましょう。

また想定したポート以外で合う保障はありません。実例の場合は、時代が比較的近いメディテレニアンハーバーやミステリアスアイランド、ポートディスカバリーはまだしも、ロストリバーデルタやアラビアンコーストでは確実に浮きます。特に女性のファッションは移り変わりが激しいのである程度は覚悟しましょう。

 写真16ミステリアスアイランドでの一枚。舞台は1873年なのでちょっと新しいがまあ大丈夫?

 

今回は、パークの新しい楽しみ方を葉ノ瀬さん、ぐんそうさんにご紹介して頂きました。

節度をもって、パークのムードになじむ、これも東京ディズニーシーならでは、と言えるのではないでしょうか?

 

【寄稿者情報】

葉ノ瀬 さん

20世紀初頭の乗り物に大変詳しく、東京ディズニーリゾートを様々な視点から観察し、記事やツイートをされている。

葉ノ瀬さんのアメリカンウォーターフロントに関する記事はまだまだ続きます。

今後の記事にもご期待ください。

Twitter:@N_Hanose

Blog:寝古鉢鉄工所

葉ノ瀬さんの寄稿記事はこちら

 

【モデル情報】

ぐんそうさん

・コンフェティ『東京ディズニーシーの帆船たち』シリーズライター。

・来航外国帆船の見学会や重要文化財明治丸の修復等に関わる帆船愛好家団体「SaltyFriends」のメンバーとしてご活躍。

『週刊HMSヴィクトリーを作る』監修(デアゴスティーニにて刊行中)

©Disney

 - ThemePark , ,