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アメリカンウォーターフロントの自動車事情を探る

20世紀初頭のアメリカを再現した東京ディズニーシーのエリア、アメリカンウォーターフロント。

この地には時代背景や設定に沿った興味深い看板や広告がたくさんあります。

今回は、こちらの看板広告を元に、当時の自動車事情を探っていきましょう。

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これは、New Amsterdam Electric Automobile co,つまりニューアムステルダム電気自動車会社の広告です。

電気自動車といえば最新のクルマのはずですが、なぜ、20世紀初頭(1912年とも言われています)のニューヨークが舞台であるアメリカンウォーターフロントにあるのか?

そしてなぜこんなにも看板は古びているのでしょうか。当時のクルマ事情から見ていきましょう。

アメリカンウォーターフロントの時代設定よりも少し前、1900年代のニューヨークではガソリン車、電気自動車、蒸気自動車が三つ巴の争いを繰り広げていました。ガソリンエンジンは発明されたばかりで信頼性が乏しく、それ以外の動力を利用するクルマが幅を利かせていたのです。実はモーターと電池の発明はガソリンエンジンより早く、技術の蓄積がある点で有利でした。世界で始めて時速100kmを記録したジャメ・コンタント号が電気自動車であったほどです。

ジャメ・コンタント号の写真はこちら

電気自動車には利点がいくつかあります。

ひとつはスタートが簡単であること。当時のガソリン車はクランクハンドルを回して始動するためハンドルの反動、俗に言う「ケッチン」を喰らう危険性がありましたが、電気自動車はボタンひとつで発進できます。

二つ目は静寂であること。開発途上のガソリン車と比べ振動は少なく、排ガス、煤煙も出ないと上流階級に歓迎されてました。電池が未発達であるがゆえの航続距離の短さが弱点ですが、逆に行動範囲が狭かった当時の女性向けとして売り出されました。

最初にご紹介したアメリカンウォーターフロントの看板広告が “Cafe society’s Towne Car” つまり社交界の足と銘打ち、上流階級の女性たちが乗り込む姿が描かれているのはこんな理由があったのです。

実用化されすでに100年以上経った蒸気自動車も電気自動車と同様初期は有利でした。

アメリカンウォーターフロントに停泊している豪華客船、SSコロンビア号船内のテディ・ルーズヴェルト・ラウンジが称えるアメリカの偉大な冒険家であり指導者、セオドア・ルーズヴェルトの公用車に指定されたほど安定性を確保していたのです。

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スチームボート・ミッキーズ前にあるトラックは縦型ボイラーで蒸気自動車とわかりやすいですが、当時の乗用車は一見ガソリン車と見間違えるほど、どれも姿格好が洗練されています。

タフトの公用車の写真はこちら

ルーズベルトの後継者であるタフトの公用車。1909年ホワイト社製モデルM蒸気自動車。

ただ外燃機関であるがための弱点がありました。初期の蒸気自動車は動力となる蒸気が使える状態に成るまで20分以上時間が掛かってました。後に登場した半瞬間式ボイラーにより、5分以下まで短縮し、他の機関に対抗しましたが、結局の所蒸気自動車は頻繁に給水しなければならず、この点において冒頭で挙げた三種類の自動車の中では一番不利でした。

早くからガソリン車が一般的となったヨーロッパと比べ、アメリカではなぜ不便な自動車が遅くまで生き残ったのか。

それはガソリンエンジンを搭載するクルマを製造するにはガソリンエンジン関連を持っていたセルデンに特許料を支払わなければならなかったのです。この特許から逃れ自動車を作るには、ガソリンエンジン以外の動力を使うしかなかっため、他の機関が発展したという事情もありました。

しかし、ガソリンエンジ車の発達は日進月歩であり、追いつかれるのは時間の問題でした。

静粛性の高さから亡霊と名づけられたロールスロイス・シルバーゴーストや大量生産により価格を大幅に下げたフォードT型の登場、さらにセルモーターによるスターターの実用化が決定打となり、これらの利点が打ち消され他の機関の弱点ばかりが浮き彫りになったのです。こうして、1910年代に入るとセルデンの特許が無効になった事もあり、蒸気自動車と共に電気自動車は衰退していきました。

このような事情により、1912年ごろが設定のアメリカンウォーターフロントにある電気自動車の広告が古びているのです。

電気自動車がすべて消え去ったわけではありません。走行距離が限られるフォークリフトや牛乳配達車で細々と使用され、世界大戦にて重いクラッチなどの機構を省略するための電動戦車への技術的な試みが続いた後、現代のニューヨークのイエローキャブに電気自動車が導入されました。

現在と同じくガソリン車以外のクルマが往来していた当時のニューヨークに思いをはせながら、アメリカンウォーターフロントを旅するのも良いかもしれません。

 

【寄稿者情報】

葉の瀬さん

20世紀初頭の乗り物に大変詳しく、東京ディズニーリゾートを様々な視点から観察し、記事やツイートをされている。

多彩な趣味を持つ葉の瀬さんの今後の記事にどうぞ、ご期待ください。

Twitter:@N_Hanose

HP:寝古鉢鉄工所

 

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